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第5章

680話 エルカディア侯爵

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「ほう……。この私を知らんのか」

「知らないね」

「エウロス男爵殿! 頭が高いぞ! この御方は――」

「よい。面白い小僧じゃないか。私はグラン・フォン・エルカディア。国王陛下より侯爵の地位を賜っている」

「なに? あんたが……」

 このゲーム風の異世界に転移してきた俺が最初に訪れた町。
 それはエルカの町だ。
 武の聖地『テツザン』やエルフの里『アルフヘイム』を訪れた際など、エルカの町を離れることもあった。
 しかし、基本的にはエルカの町を拠点に活動してきている。
 俺たち『悠久の風』が『毒蛇団』を掃討したのも、エルカの町だ。
 そして、そんなエルカの町が属するのはエルカディア侯爵領。
 つまり、俺の目の前にいる老人が、あの町を含む一帯の領主なのだ。

「おお……。ご機嫌麗しゅう、エルカディア卿」

「今さらそのような口調は不要だぞ、エウロス卿。冒険者上がりの小僧に、礼儀を求めるほど狭量ではない。公の場は別だがな」

「そうか。なら、お言葉に甘えるとするかな。それで……一体何の用だ?」

 ここは王城の片隅にある控え室である。
 一口に控え室といっても、王城内にいくつかある。
 この控え室は俺専用に用意されたもののはずだ。
 わざわざ訪れてきたということは、何かしらの用事があると考えていい。
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