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第5章

656話 山岳地帯

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 俺は馬車内でアスター騎士爵から情報収集を行っている。
 目的地である彼の邸宅には既に到着しているのだが、話のキリが悪いのでもう少し続けることにしたのだ。

「で? 王都の近くに未開発の山間部が残っていたというのが、どうしてアスター卿に騎士爵を授与する話に繋がるんだ?」

「あそこは地形的にやや出入りがしにくい地域なのですが、一応は王都近郊です。そのため、開発して正式に誰かが領地として治めるべきだと考えられたそうです」

「ふむ。まぁ意図は分かるが……」

 王都近郊にある山間部。
 日本で言えば、東京都心や大阪中心部の近辺に山があるようなものか。
 そりゃ、開発して正式な領地として治めたくなる気持ちも分かる。

「しかし、どうしてそんな場所が未開発のまま残っていたんだ?」

「それはもちろん、開発が容易な平野部の方が遥かに開発が容易だったからです。特に、より王都に近い場所は。ですがそろそろ、それらの場所の開発も頭打ちになってきており、陛下は新たな土地の開発を常に考えておられるのです」

「なるほど」

 まぁ、当然といえば当然の話だ。
 開発が簡単なエリアばかりに注力していては、いつかは開発が行き詰まる。
 国民の人数が一定なのであれば、別にそれでも構わないのだが……。
 我らがバルドゥール王国のように発展傾向にある国なら、そうはいかない。
 増え続ける国民が移住する先を見つける必要がある。
 最終的には『他国へ侵攻』や『国民の間引き』も考えられるのだろうが、それよりも先に未開発の地域に手を付けるのが先という話だ。

「しかし、そうなるとその山岳地帯は放置されていたのか」

「はい……。他領と接するエリアでは、魔物が溢れない程度に間引いていたそうですが……。内部は完全に手付かずの状態となっていました」
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