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第5章
587話 男爵として
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冒険者ギルドで、俺は男爵になったことを告げた。
そして、周囲にいる者たちに頭を下げさせる。
その中にはもちろん、俺の対応をしてくれている最中だった受付嬢も含まれている。
彼女は今、床に頭を擦りつけて平伏していた。
「あ、あなたがあの有名な……。いや、でも、まさか本当に……。エルカ迷宮が討伐されたという情報は回ってきていましたけど、それを成し遂げた張本人が来られるとは……。しかも、こんなにも早く……」
「信じられないかもしれないが、これが現実だ。受け入れてくれ。姿勢も楽にしてくれていいぞ」
「は、はひぃ……。かしこまりました……」
彼女や周囲の者たちが平服状態を解除していく。
「それで、ええと……」
「話の途中だったな。今晩、一緒に食事をしようと誘ったんだが、どうだ? 俺たち『悠久の風』に、良い店を案内してほしいんだ」
「お食事ですか……。お誘いはありがたいのですが、私の仕事は冒険者の方々をサポートすることでして……。特定の冒険者パーティと私的に友好を深めるわけにはいかないのです。申し訳ありませんが……」
受付嬢が恐縮したように答える。
「そうか。残念だな」
せっかく王都に来たのだから、美味しい店に案内してもらおうかと思ったのだが。
「……」
受付嬢は無言で俯いている。
俺の申し出を断ったせいで、居心地が悪いのだろう。
しかし、これは仕方のないことだ。
受付嬢の言っていることは理解できる。
俺たち『悠久の風』ばかり優遇するわけにはいかないのだろう。
「まぁ、無理強いはできないな」
「すみません……」
「気にするな。そういう規則があるなら、従うしかない」
「はい……」
「だが、抜け道はある」
「……えっ?」
「例えば、冒険者パーティ『悠久の風』全員ではなく、俺個人ならどうだ?」
「……同じことです。パーティ全員と同席するよりはマシですが……。冒険者パーティのリーダーと親しくするのはあまり推奨されていません」
「違う違う。『悠久の風』リーダーのコウタではなく、コウタ・エウロス男爵としてだ。一貴族家の当主が、市井の者の考えを取り入れるために食事を共にすることはたまにある話だ。そして時には、その貴族家の当主が冒険者であり、その相手がたまたま冒険者ギルドの受付嬢であることもあるだろう」
「…………」
「これなら問題がない。違うか?」
「そ、それは……」
受付嬢が口ごもる。
ちょっと無理があるかな?
「……」
「……」
しばらく無言の時間が流れる。
「わ、分かりました……」
受付嬢が絞り出すような声で言った。
「ありがとう。助かるよ」
「ですが、その……」
「ん? どうした?」
「先にお伝えしておきます。私は夫がいる身でして……」
そして、周囲にいる者たちに頭を下げさせる。
その中にはもちろん、俺の対応をしてくれている最中だった受付嬢も含まれている。
彼女は今、床に頭を擦りつけて平伏していた。
「あ、あなたがあの有名な……。いや、でも、まさか本当に……。エルカ迷宮が討伐されたという情報は回ってきていましたけど、それを成し遂げた張本人が来られるとは……。しかも、こんなにも早く……」
「信じられないかもしれないが、これが現実だ。受け入れてくれ。姿勢も楽にしてくれていいぞ」
「は、はひぃ……。かしこまりました……」
彼女や周囲の者たちが平服状態を解除していく。
「それで、ええと……」
「話の途中だったな。今晩、一緒に食事をしようと誘ったんだが、どうだ? 俺たち『悠久の風』に、良い店を案内してほしいんだ」
「お食事ですか……。お誘いはありがたいのですが、私の仕事は冒険者の方々をサポートすることでして……。特定の冒険者パーティと私的に友好を深めるわけにはいかないのです。申し訳ありませんが……」
受付嬢が恐縮したように答える。
「そうか。残念だな」
せっかく王都に来たのだから、美味しい店に案内してもらおうかと思ったのだが。
「……」
受付嬢は無言で俯いている。
俺の申し出を断ったせいで、居心地が悪いのだろう。
しかし、これは仕方のないことだ。
受付嬢の言っていることは理解できる。
俺たち『悠久の風』ばかり優遇するわけにはいかないのだろう。
「まぁ、無理強いはできないな」
「すみません……」
「気にするな。そういう規則があるなら、従うしかない」
「はい……」
「だが、抜け道はある」
「……えっ?」
「例えば、冒険者パーティ『悠久の風』全員ではなく、俺個人ならどうだ?」
「……同じことです。パーティ全員と同席するよりはマシですが……。冒険者パーティのリーダーと親しくするのはあまり推奨されていません」
「違う違う。『悠久の風』リーダーのコウタではなく、コウタ・エウロス男爵としてだ。一貴族家の当主が、市井の者の考えを取り入れるために食事を共にすることはたまにある話だ。そして時には、その貴族家の当主が冒険者であり、その相手がたまたま冒険者ギルドの受付嬢であることもあるだろう」
「…………」
「これなら問題がない。違うか?」
「そ、それは……」
受付嬢が口ごもる。
ちょっと無理があるかな?
「……」
「……」
しばらく無言の時間が流れる。
「わ、分かりました……」
受付嬢が絞り出すような声で言った。
「ありがとう。助かるよ」
「ですが、その……」
「ん? どうした?」
「先にお伝えしておきます。私は夫がいる身でして……」
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