社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ～【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ！～

第５章

５７２話 強さとは

「ほら、ナディア。お前も飲め」

「あ、ああ……」

　俺が酒を勧めると、ナディアは微妙な顔をした。

「どうした？　酒は苦手だったか？」

「……いや、そういうわけではないが……」

「なら、飲め。お前も盗賊の討伐に貢献したんだから」

「……分かった」

　ナディアの表情はぎこちない。
　何かを恐れている？
　王都騎士が今さら盗賊討伐ごときがトラウマになったりはしないはずだが……。

「ま、なんだ。今日くらいは羽目を外しても構わないんじゃないか？」

「……」

　ナディアは答えなかった。
　少しの間、沈黙が流れる。
　やがて彼女は覚悟を決めたのか、ゆっくりと口を開いた。

「……エウロス男爵殿」

「なんだ？」

「……貴様は強すぎる。そして、敵対者に対する容赦がない」

「そうかもしれないな」

　俺は素直に肯定する。
　女子供はともかく、盗賊相手に慈悲を与えるほど優しくはない。

「我は怖かった。簡単に人を殺せる存在が」

「ふむ」

「かつて我は決めた。強くなると。強くなって民を守ると。しかし、人を殺す決意はしていなかった。我は弱いままだ」

「……」

「だから、どうか教えてほしい。その強さとは一体何なのかを」

　ナディアは真剣な表情で言う。

「それは……」

「お願いだ！　我に強さの真髄を教えてくれ！」

「……」

　ナディアの訴えを聞き、俺は考える。
　彼女の願い――強くなりたいという気持ちに応えるべきか。

「……分かった」

「本当か！？」

「ああ。とりあえず、酒を飲みながら話そう」

　俺はそう言って、自分のグラスに酒を注ぐ。

「……うむ」

　ナディアも納得し、自身のグラスに酒を満たした。
　こうして、俺たちは宴の席で語り合う。

「さて、まずは何から話すかな……」

　俺はそう言いながら、ナディアの瞳を見つめる。
　誇り高き女騎士として強い意志を感じさせる目をしている彼女だが、今はどこか弱々しい印象を受ける。

「そうだな。じゃあ、最初は俺の強さについて教えるとするか」

「頼む！」

「俺が強い理由はいくつかある。魔法技術の高さ、近接戦闘の技量、リーダーとしての判断力、決断への迷いの無さなどなど。それらすべてを総合的に評価して、俺という人間は『強い』と言える」

「なるほど」

「ただし、俺が最初から強かったわけじゃない。昔は弱く、挫折もした。でも、そこから這い上がってきた」

　まぁ、ＭＳＣのときの話だけどな。
　この世界に来てからは、ＭＳＣの知識や経験を利用して無双している。
　敗北した経験はほぼない。

「……具体的にはどんなことがあったのだ？」

　ナディアがそう問う。
　ＭＳＣ時代の俺の過去を話してやるとするか。