社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ～【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ！～

第５章

５６５話 断末魔

「……大丈夫です。いざというときは、あたくしが何とかします」

「はぁ……」

「うぅ……」

　ネリスが真剣な表情で言ったことで、ミルキーもルンも引き下がるしかなかった。
　５人は通路の隅に移動し、ヒナタが感じ取った人影を待つことにした。
　しばらくすると、その人物は姿を現した。

「……ったく。ボスも人使いが荒いぜ……」

　現れたのは盗賊風の男だった。
　ぼさぼさに伸びた髪に無精ひげ。
　薄汚れた布切れを身に着けている。
　もちろん一見しただけで盗賊と断定することはできない。
　だが、その身なり、そしてこんな場所を歩いていることを踏まえると、十中八九盗賊であるとみて間違いないだろう。

「――【ララバイ】」

「……ッ！？　な、なんだ……？」

　男が近くまで来ると同時に、チセは即座に魔法を発動させた。
　チセが得意とするのは、眠りの魔法だ。
　油断をしている格下であれば、１０秒以内に眠らせることができる。
　だが――

「こ、こんなところで寝てられるか！　がぁっ！！」

　男は気合いで眠気に抗った。
　そして周囲を警戒する。
　そのときだった。

「狐火――【鳳仙火】」

「あ、熱い！！　何だこれ！？」

　ヒナタが放った狐型の火の玉が男の足元に着弾する。
　眠気によって反応遅れた男はその熱さを堪えきれず、地面に転がってしまった。

「なんだよ。弱すぎないか？」

「ワタシの出番なかったですぅ」

「いえ、そんなことはありませんよ。さぁ、皆様。とどめをお願いいたします」

　ネリスが無慈悲に指示を出す。
　実はネリスと盗賊の男は『毒蛇団』時代に面識があったのだが、ネリスは気づかなかったことにした。
　彼女の忠誠はすでにコウタに向いている。
　過去は振り返らない女なのだ。

「ぎゃあああぁっ！」

　一行の総攻撃を受け、哀れな盗賊は断末魔を上げたのだった。