社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ～【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ！～

第５章

５６１話 落とし穴の罠

「それで、本当のところは？」

「俺は別に盗賊になりたかったわけじゃないんだ！　ただ、他に選択肢がなかっただけで……。あ！　でも、盗賊時代に培った技術や経験があったおかげで、こうしてみんなの役に立って――」

「盗賊だったことは事実なんですね？」

「…………はい」

　まくし立てるように言い訳をしていたグレイスだが、エメラダの圧に負け、観念して素直に認めた。

「……」

「あの……、ごめんなさい」

　黙り込むエメラダを見て、グレイスは謝罪の言葉を口にした。
　普段は男勝りな性格をしているグレイスだが、エメラダには頭が上がらない。
　盗賊に関する物事を取り扱う際には、謎の迫力があるのだ。

「どうして、そんな大事なことを話してくれなかったんですか？　あたしも仲間なのに……」

「……えっと、その、話す機会がなくってさ」

「確かにあたしは盗賊に対して思うところがありますけど……。それでも、同じパーティの仲間じゃありませんか。もっと信頼してほしいです……」

「悪かったよ。今度からは隠し事なしにするから」

「約束ですよ。絶対に守ってくださいね」

「ああ。もちろんだ」

　グレイスは胸を撫で下ろした。
　エメラダがそれほど怒っていなくてよかった。

「……おっと？　エメラダ、ちょっと足を止めてくれ」

「どうしました？」

「ほら、ここだ。ここにトラップがある」

　グレイスは地面を指差した。
　そこには、不自然な窪みができていた。

「なるほど。これを踏むと、マズイことが起きるわけですか」

「ああ。どうやら落とし穴になっているらしい。トラップを踏むと、ここに直径１メートルぐらいの落とし穴が発生する。下の部屋には、魔物がうようよいやがるぜ」

　このダンジョンはまだ卵の状態だ。
　エルカ迷宮のように、極悪なトラップは存在しない。
　だが、落とし穴を設置し、その先にモンスターハウスを配置する程度のトラップはあるようだ。

「さぁ、ここは避けて通ろう。もっと奥へ進んでいこうぜ」

「……」

「エメラダ？」

　エメラダが何かを考えている様子だったので、グレイスは声をかけた。
　だが、それに対する返答はなかった。
　答えの代わりに、エメラダは行動に移す。