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第5章

541話 チセの案

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「男爵様、ここは私に任せてください!」

「チセ?」

「私の【ララバイ】なら、あの男を眠らせることができます。そして――」

「そして?」

「ええっと、どうしましょう?」

 俺はズッコケそうになった。
 どうして、みんなそう勇み足なのか。
 ローズといいエメラダといい、後のことを考えていない。

 チセだってそうだ。
 見張りの男を眠らせたところで、どうなるというわけでもない。
 俺たちが村に入れないという現状は何も変わらないのだ。

「へへっ。チセっちはトロ臭いなぁ……」

「リン先輩……」

「でも、そんなところも可愛いぜ!」

「うぅ……」

 リンに抱きしめられて、チセの顔が真っ赤に染まる。
 なんとも微笑ましい光景だ。

「ふん。名高い『悠久の風』と言っても、所詮はこの程度か」

 ナディアが鼻で笑う。

「なんだと?」

「エルカで『毒蛇団』を倒した実績は認めよう。それに、エウロス男爵殿の実力も確かだ。しかし、パーティメンバーがこうも脳筋揃いだとはな」

「ふむ?」

 俺は少しだけ興味を抱いた。
 ナディアは調教済みだ。
 夜のベッドで散々泣かしてあげたことがある。
 そんな彼女が、こうも大胆なことを言うとは。
 馬車で移動中は『悠久の風』メンバーに掛かり切りだったし、ヘソを曲げているのかもしれない。

「面白いことを言うじゃないか」

「事実を述べただけだ。そもそも、この村に入ろうとする我らを阻んでいるものは何だ?」

「それは……。この門だな」

 見張りはいるが、直接何かをしてくるわけではない。
 俺たちの邪魔をしているのは、あくまでも門である。

「では、それを飛び越えればいいではないか」

「……ほう」

 ナディアの言葉に、俺はニヤリと笑ったのだった。
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