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第5章

535話 王都へのルート

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「――で、彼女たちが馬車の速度に影響しているって?」

「ああ。ゴブリンと遭遇しても、今のようにあっさりと倒しているだろう? 中級以上の魔物が出ても、他の者たちが出れば問題なく対処できている。馬車の速度が遅くなることはない。普通、魔物と遭遇すれば多くの人手を集めて対処するものだ。その間、馬車は停まることになる」

「ふむ……」

 確かに理屈は通っている。
 馬車の進行方向に魔物が出た場合に、瞬殺できるかどうか。
 それは町から町への移動時間に大きな差を生む。

「しかし、それにしても早い気がするが……」

「貴殿らの戦闘能力が高いことは、出発前から分かっていたことだ。当然、それを前提にしたルートを進んでいるとも」

「ああ、そういうことか……」

 たくさんの魔物が生息するこの世界を、人族がなぜ生き延びることができているのか?
 それは、ジョブを活かして魔物を戦い、ジョブを活かして生産行動をできるからである。
 ならばなぜ、ジョブを活かして魔物を駆逐し、人族がまとまって巨大な都市を作らないのか?
 その理由はいくつかあるが、最も大きいのは地脈を流れる魔力の関係だ。

 魔力の濃淡やその種類により、魔物の発生頻度や凶暴性は大きく変化する。
 また、栽培が可能な農作物にも影響が出る。
 現時点で町や村がある場所は、人族にとって魔力の濃度や種類がちょうどいい地点なのだ。
 人族が開拓できていない土地はまだ大量に残っている。
 ちなみに、俺が開拓を指示されているエルカから西方の地域は、『現時点では開拓されていないが、次に開拓するならここ』というぐらいの開拓難易度である。

「安全を過度に重視せず、最短に近いルートで王都に向かっているわけだな」

 魔物の出現頻度が少ない場所を通るようにすれば、安全度は高まる。
 普通の隊商ならばそうするだろう。
 だが、最終的な目的地が決まっている場合、それは遠回りをしていることになる。
 俺たち自身が強大な戦闘能力を持っている以上、安全を重視するあまり時間を浪費するのは悪手だ。

「そういうことだ。まぁ、夜営のための村ぐらいは目星を付けているがな。――ほら、見えてきたぞ」

 ナディアの声を受け、俺は視線を前に向ける。
 そこには、小さめの山村があったのだった。
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