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第5章

533話 王都への道中

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 数日後。
 俺たち『悠久の風』はエルカの町を離れ、馬車で王都に向かっていた。

「それで、ナディア。王都へはどれくらいで着くのだ?」

「は、はいっ! えっとですね……」

 ナディアは俺からの問いかけに対し、緊張した様子を見せる。
 彼女は俺の女兼ペットとして調教中だ。
 だが、それは裏での話。
 名目上、彼女はまだウルゴ陛下の命を受けて動いている女騎士である。

「そう緊張するなよ。お前の尻を叩いたのは、あくまでプレイの一環だ。真っ昼間から変なことはしない。丁寧な言葉づかいも不要だ」

「……そ、そうか?」

「それに、こういうのはギャップが大事なんだ。昼間はキリッとした凛々しい女騎士が、夜には変貌する。それがいいんじゃないか」

「わ、分かった。努力してみる」

「ああ、頼むぞ」

 俺はナディアの頭を撫でてやる。
 すると、彼女は気持ち良さそうな表情を浮かべた。

「こほんっ!」

 そこで、シルヴィが小さく咳払いをする。

「どうした、シルヴィ?」

「いえ、何でもありません。ただ、少しだけモヤッとしてしまっただけです」

「ほう……」

「ナディアさんばかり構わないでください。わたしにも構ってください」

「ははっ……。シルヴィは可愛いなぁ」

 俺はシルヴィの髪を優しく撫でる。

「ん……。幸せです」

「俺もさ。……さて、話を戻そうか」

 俺はナディアに向き直り、話を続ける。

「それで、王都までどのくらいかかる?」

「えーっと。今は半分くらいだ。あと数日もあれば到着できると思う」

「そうか。意外に近いんだな」

 この世界の科学水準はMSCと相違ない。
 そして、MSCはいわゆる中世ヨーロッパ程度の文明レベルを持つ世界だった。
 魔法や闘気の概念があるので、地球における中世ヨーロッパよりは便利だが……。
 移動という点においては、馬車を使うのが一般的だ。
 下手をすれば移動に数週間単位で掛かると思っていたが、エルカの町と王都は結構近かったらしい。
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