上 下
526 / 1,260
第5章

526話 お誘い

しおりを挟む
「わ、分かった。王都に帰還したら、貴殿の活躍ぶりを必ず陛下に報告しよう」

「いや、それも大切だが、それだけじゃない」

「……?」

 ナディアは不思議そうな顔をしている。
 彼女にとっての名誉とは、ウルゴ陛下から高い評価を受けることらしい。
 だが、俺が求めているのは必ずしもそれではない。

「お前に要求しているのは、一般民衆や騎士団員たちから俺への評判を良くすることだよ」

「む、それは構わないが……。それに何の意味が?」

「俺は民衆から慕われたい。そのために、俺の評判を上げる必要があるんだよ。そしてそれは、爵位を得たり冒険者ランクを上げるだけじゃ不十分なんだ。ナディア、お前のように実直な女騎士から口コミで俺の評判を広げてもらえれば、効果は大きいと思う。これはお前にしか頼めない重要な案件だ」

「そ、そうか……! 我にだけ出来ることか……!!」

 ナディアはパッと表情を明るくする。

「わ、分かった! このナディア・エルカインド、全力をもって貴殿のために尽力することを約束するぞ!」

 ナディアは力強く宣言した。
 よし、これで俺の名声もうなぎのぼりだな。
 今後、『パーティメンバー設定』を活用して仲間を増やしていく際の効率が良くなるだろう。
 それに、西部地域の開拓員を募集する際にもプラスに働くはずだ。

「では、早速だが王都に向かうとしようではないか。我の当初の目的は視察だったが……。既に『毒蛇団』の掃討を終えているのであれば、これ以上この町に留まる理由もあるまい。貴殿も我と共に来られるがよい」

「そうだな。それが良さそうか」

 王都でウルゴ陛下に報告して、新たな恩賞とかをもらって、開拓員を募集して、西部地域に向かって、開拓を始める。
 こんな感じの流れだな。

「よし、そうと決まればすぐに馬車の手配をしてこよう。明日の朝に出発できるよう、段取りを行えるか?」

「ちょっと待ってくれ。王都に行くのはいいが、何もそこまで急ぐ必要はないだろう? 少しぐらいゆっくりしていこうぜ?」

「む? だが、ウルゴ陛下の命であるゆえ、可能な限り迅速に対応する必要が……」

「急ぎすぎて不手際があれば、本末転倒だろ? ちょっとぐらいは羽根を伸ばす方がいい。そうだ、今日の夕食はみんなで食べないか?」

「ふむ……。貴殿がそう言われるのなら、それもよかろう」

 ナディアは納得してくれた。
 女騎士とのディナーか。
 場所は料亭ハーゼでいいだろう。
 半ば俺のホームグラウンドのようなものだし、貸し切りにして盛大に楽しもうか。

 あわよくば、ナディアを酔わせて……。
 ぐへへ。
 今から楽しみだぜ。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?

澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果  異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。  実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。  異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。  そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。  だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。  最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい

増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。 目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた 3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ いくらなんでもこれはおかしいだろ!

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

処理中です...