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第5章

522話 もう掃討作戦は終わっているぞ

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 女騎士ナディアとシルヴィの口論は、ナディアに軍配が上がった。

「おい、ちょっと落ち着けよ」

「ご、ごしゅじんさまぁ~!」

 泣きながら抱きついてきたシルヴィの頭を撫でてやる。

「ふん。我は冷静沈着だぞ」

「シルヴィは俺の仲間だ。それに、『悠久の風』のサブリーダーでもある。あまり虐めないでもらおうか」

「貴殿がそう言うのなら、一考はしよう。だが、先に我へ絡んできたのはその娘だ。そちらにも非はあるはずだが?」

「それはそうだが……」

 かなり微妙なところだな。
 女騎士ナディアと男爵家当主である俺なら、もちろん俺の方が偉い。
 だが、『ウルゴ陛下の命を受けて物事を処理する』という場面に限っては、ナディアの方が権限が強いと言ってもいいだろう。
 そうした場面でナディアが俺に対して厳しく追及していたところ、シルヴィが彼女に食って掛かったのだ。

 Bランクパーティ『悠久の風』のサブリーダーであるシルヴィは、狩りや任務の最中であれば強い発言権を持つ。
 だが、今は冒険者ギルドを歩いていただけだ。
 シルヴィの発言をナディアが軽んじたことも、あながち間違いではない。
 とはいえ、それは理屈での話だな。

「悪いが、シルヴィへの侮辱を撤回してもらえるか? シルヴィは俺の女だ。自分の女を泣かされて、とても不愉快だ」

「ふんっ……。奴隷風情を気にかけるとは、聞きしに勝る女好きぶりだな。だが、貴族とはいえろくに仕事もしない貴殿の言うことを聞く義理はない」

 ああ、そうか。
 ややこしくなったのは、俺たち『悠久の風』が『毒蛇団』の掃討作戦をサボっていると勘違いされたままだったからだな。
 本来であれば、シルヴィではなく俺が説明するべきところだった。

「もう掃討作戦は終わっているぞ」

「……なに?」

「この町にはもう悪者は残っていない。ついさっきも、わずかな残党を狩っていたところだ」

「ば、馬鹿な……。ギルドマスターが言っていたことは本当だったというのか!?」

 ギルマスと彼女が揉めていたのは、それが原因か。

「だから、最初からそう言っているんだが……」

「そ、そんなはずはない! 頭領の『毒霧』のアルヴィンはAランク相当の実力者で――」

「アルヴィンっていうと……コイツのことだろ?」

 俺はストレージからアルヴィンの首を取り出す。
 王都へ持っていくために収納していたものだ。

「な、ななな……!?」

 ナディアは驚愕に目を見開き、言葉を失うのだった。
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