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第5章
517話 ヒナタ
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『毒蛇団』を掃討した俺たち『悠久の風』は、赤狐族の少女を保護した。
奴隷狩りに遭ったそうだ。
おそらく、家族も生きてはいまい。
俺は泣きじゃくる少女の頭を撫でながら、シルヴィとユヅキに声をかける。
「彼女を保護しようと思う。いいよな?」
「もちろん構いません! ご主人様の御心のままに!」
「コウタがそう決めたのなら、しょうがないね」
二人がそう答える。
ミナやリンたちも異論はないようだ。
「ありがとう。みんな」
俺は頭を下げて礼を言う。
そして、改めて少女に向き直った。
「俺はコウタという冒険者だ。君の名前は?」
「ぼくは……ヒナタ」
「そうか。よろしくな、ヒナタ」
俺はヒナタの手を取り、握手を交わす。
そして、他の仲間たちに目配せをした。
「さっそくだが、まずはこの子を保護する。場所はどうするか……」
「……えっと。あたしたちと同じ宿屋でよろしいのでは?」
「それで問題ないでしょう。憎き『毒蛇団』もいなくなった今、わたくしたちを狙う者もありません」
「……そうだね。でも、念のためティータが結界を張っておく。これで安全……」
エメラダの提案に、ローズとティータが同意する。
「うん。それが良いだろう」
「俺も賛成だぜ!」
「へへっ。これで一件落着だな」
グレイスやリン、そして他のメンバーもみんな、納得している。
が、一人だけ異論を持っている者がいた。
「ちょっと待ってくださいにゃ!」
セリアだ。
「どうしたんだ? セリア」
「今回の『毒蛇団』の掃討作戦は、ウルゴ陛下やギルマスの肝いりで行われたものですにゃ」
「そうだな」
「依頼達成の報告は早めにしたほうがいいと思いますにゃ」
「それは……」
俺は口籠ってしまう。
確かに、報告は早いうちに行った方がいい。
だが、精神的にも肉体的にも傷ついたヒナタを放っておくのは気が引けたのだ。
「……この子はしばらく休ませてやりたい。もう少し時間を置いてからでも遅くはないだろう」
「……分かりましたにゃ。コウタさんがそう仰るのなら、従いますにゃ。取り急ぎ、私がギルドにだけは報告しておきますにゃ」
「すまんな。苦労をかける」
「いえ、これくらいは当然ですにゃ」
セリアが気遣ってくれたおかげで、事後処理はスムーズに進みそうだ。
彼女には感謝しかない。
冒険者パーティがこなした依頼業務について報告する場合、リーダーが同席するのが基本となる。
こういうのは信頼が大切だからな。
『依頼とは無関係に狩った魔物の魔石を売却する』などであれば、わざわざ同行しなくてもいいのだが、今回はそういうわけでもない。
『毒蛇団』の討伐については、国王の勅命を受け、ギルマスの監督の元で行われたものだ。
つまり、その任務達成の最終報告は、直接王都に行って行う必要がある。
そしてもちろん、最終報告の前の一次報告は、ギルマスに行うのが基本である。
いろいろと面倒だが、これも貴族となり名声を得るために必要なことだ。
え?
どうして貴族になりたいかって?
そりゃもちろん、より多くの女を囲ってハーレムを作るため……というのもあるが、それだけではない。
世界滅亡の危機に立ち向かうためだ。
俺がシルヴィやユヅキたちと共に幸せに暮らすためにも、いろいろと頑張っていかねばなるまい。
「それじゃあ、宿屋に戻ろうか」
俺たち『悠久の風』はヒナタを連れて宿屋へと戻り始めるのだった。
奴隷狩りに遭ったそうだ。
おそらく、家族も生きてはいまい。
俺は泣きじゃくる少女の頭を撫でながら、シルヴィとユヅキに声をかける。
「彼女を保護しようと思う。いいよな?」
「もちろん構いません! ご主人様の御心のままに!」
「コウタがそう決めたのなら、しょうがないね」
二人がそう答える。
ミナやリンたちも異論はないようだ。
「ありがとう。みんな」
俺は頭を下げて礼を言う。
そして、改めて少女に向き直った。
「俺はコウタという冒険者だ。君の名前は?」
「ぼくは……ヒナタ」
「そうか。よろしくな、ヒナタ」
俺はヒナタの手を取り、握手を交わす。
そして、他の仲間たちに目配せをした。
「さっそくだが、まずはこの子を保護する。場所はどうするか……」
「……えっと。あたしたちと同じ宿屋でよろしいのでは?」
「それで問題ないでしょう。憎き『毒蛇団』もいなくなった今、わたくしたちを狙う者もありません」
「……そうだね。でも、念のためティータが結界を張っておく。これで安全……」
エメラダの提案に、ローズとティータが同意する。
「うん。それが良いだろう」
「俺も賛成だぜ!」
「へへっ。これで一件落着だな」
グレイスやリン、そして他のメンバーもみんな、納得している。
が、一人だけ異論を持っている者がいた。
「ちょっと待ってくださいにゃ!」
セリアだ。
「どうしたんだ? セリア」
「今回の『毒蛇団』の掃討作戦は、ウルゴ陛下やギルマスの肝いりで行われたものですにゃ」
「そうだな」
「依頼達成の報告は早めにしたほうがいいと思いますにゃ」
「それは……」
俺は口籠ってしまう。
確かに、報告は早いうちに行った方がいい。
だが、精神的にも肉体的にも傷ついたヒナタを放っておくのは気が引けたのだ。
「……この子はしばらく休ませてやりたい。もう少し時間を置いてからでも遅くはないだろう」
「……分かりましたにゃ。コウタさんがそう仰るのなら、従いますにゃ。取り急ぎ、私がギルドにだけは報告しておきますにゃ」
「すまんな。苦労をかける」
「いえ、これくらいは当然ですにゃ」
セリアが気遣ってくれたおかげで、事後処理はスムーズに進みそうだ。
彼女には感謝しかない。
冒険者パーティがこなした依頼業務について報告する場合、リーダーが同席するのが基本となる。
こういうのは信頼が大切だからな。
『依頼とは無関係に狩った魔物の魔石を売却する』などであれば、わざわざ同行しなくてもいいのだが、今回はそういうわけでもない。
『毒蛇団』の討伐については、国王の勅命を受け、ギルマスの監督の元で行われたものだ。
つまり、その任務達成の最終報告は、直接王都に行って行う必要がある。
そしてもちろん、最終報告の前の一次報告は、ギルマスに行うのが基本である。
いろいろと面倒だが、これも貴族となり名声を得るために必要なことだ。
え?
どうして貴族になりたいかって?
そりゃもちろん、より多くの女を囲ってハーレムを作るため……というのもあるが、それだけではない。
世界滅亡の危機に立ち向かうためだ。
俺がシルヴィやユヅキたちと共に幸せに暮らすためにも、いろいろと頑張っていかねばなるまい。
「それじゃあ、宿屋に戻ろうか」
俺たち『悠久の風』はヒナタを連れて宿屋へと戻り始めるのだった。
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