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第5章

512話 コウタvsアルヴィン 後編

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 アルヴィンがネリスに向けて毒霧を噴射した。
 これは毒魔法だ。
 MSCでも見たことがあるし、もちろん知っている。
 なかなか厄介な魔法だ。
 さっき生成したような岩壁では防ぎきれないだろう。
 小さな隙間からでも毒霧は侵入してくるからだ。

「ふん。無駄だよ。――【ファイアーウォール】」

 俺は毒霧からネリスたちを守るように、炎の壁を生成する。
 これなら、毒霧がすり抜けてくることはない。

「な、なんだと!?」

「お前……自分の二つ名ぐらい知らんのか? 『毒霧』とか言われている奴と戦うんだから、もちろん対応策ぐらい考えているさ」

「くそぉ! てめぇ! いったいいくつの魔法を……。ただの『好色』じゃなかったのか!?」

「ん? 好色だと?」

 俺の女好きっぷりが広まっているのだろうか?
 まぁ、別に構わないが。

「こうなりゃ最後の手を――」

 アルヴィンが懐に右手を入れる。
 追い詰められた悪役が行う、お決まりのパターンだな。
 力を得て異形の姿になる強化薬とか、町ごと何らかの危険に晒す巨大魔法陣の起動ボタンとか、あるいは自爆スイッチとかでも持っているのだろうか?
 気になるが、愛する女たちがいるこの場で悠長に眺めている必要性はない。

「させんと言っているだろう。――【アイシクルスピア】」

「ぎゃあああぁっ!!」

 俺の放った氷の槍が、アルヴィンの右腕を貫く。
 そのまま体まで貫通し、彼に大ダメージを与えた。

「がはっ! あ、腕が、血が……。ちくしょう……」

「これでお前も終わりだな。そしてこれが最後の通告だ。大人しく降参するなら、この場で殺すのはやめておいてやる」

「ぐぅ……」

 俺の言葉を聞いたアルヴィンは、悔しそうに歯噛みをする。
 だが、彼の答えは――

「……誰がてめえなんぞに屈するかよ!」

「では仕方ないな。――【エアリアル・ウィンド】」

「ぐわっ!? き、急に体が浮いて……。う、動けん!!」

 俺は風の魔法でアルヴィンを宙に浮かせた。
 周囲に密度の高い空気の塊を配置しているイメージだ。
 これでもう逃げられないし、抵抗もできない。
 超能力好きの人が見れば、サイコキネシスで浮かせているように見えるかもな。

「ネリス、こっちに来てくれ」

「承知しました。エウロス様」

 彼女は素直に従い、こちらに来る。
 俺は彼女を優しく抱き留める。
 改めて見てもいい女だ。
 シルヴィやユヅキよりも年上だが、これはこれで色香がある。
 俺は彼女を抱きしめたまま、チラリとアルヴィンに視線を向ける。

「ネ、ネリスぅ……! 殺せ! そ、そいつを殺せぇ!!!」

 彼は俺の風魔法で宙に拘束されたまま、血走った目でそう叫んだのだった。
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