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第5章

510話 アルヴィンの誤算

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「くくく……。ずいぶんと威勢がいいな。しかし、こっちには人質がいるってことを忘れちゃいねぇか!?」

 アルヴィンがそう吠える。
 彼が言っているのは、ミルキーとルン、そして見知らぬ赤髪の少女のことだ。
 彼女たちは少し離れたところの壁に鎖で拘束されている。
 ご丁寧に、電流の拷問装置付きだ。
 俺が迂闊に手を出せば、電流スイッチが押されて彼女たちが苦しむことになる。

「…………」

「ひゃははぁっ! 手も足も出ねぇだろう!」

「それはどうかな?」

 俺はアルヴィンの言葉を無視し、ゆっくりと彼に近づく。

「てめぇ……! 人質がどうなってもいいのか!! それ以上近づけばどうなるか……!!」

「ふん。できるものならやってみろ」

「くっ……。おいネリス! 電流レベルを3――いや5に引き上げろ!」

 アルヴィンが慌てて指示を出す。
 これが人質作戦の欠点だよな。
 相手が人質を無視して応戦してくれば、どうしようもない。
 できることはせいぜい、報復として人質に危害を加えることだけだ。
 それにしたって、本当に殺してしまえばそれ以上打つ手はなくなる。

 人質作戦なんぞ、雑魚の使う手段だ。
 まぁ、俺相手に限定すれば多少は有効な手段だけどな。
 人質が俺の女である場合、彼女たちの安全が確保されるまでは迂闊に手を出せないのは事実だ。
 とはいえ、それは既に過去の話だが。

「…………」

「おい、ネリス! 早く電流レベルを引き上げろ!!」

「お断りしますわ」

「なっ!!??」

 アルヴィンが驚愕する。
 それもそのはず。
 彼の要求を拒否したのは、彼の忠実な部下であるはずのネリスだったのだから。

「な、なぜだ……?」

「あたくしの主はエウロス様ですから。貴方ではないのです」

 ネリスがそう言い放つ。

「ふ、ふざけんなよ! お前は『毒蛇団』の一員だろうが! ついさっきも、コイツを奇襲して腹に致命傷を――」

「致命傷? どこにそんなものが?」

 俺はアルヴィンとネリスの会話に割って入る。
 ネリスに刺された――いや、傍目には刺されたように見えたはずの腹を晒す。
 そこには、傷など一切なかった。

「なっ!? ば、バカな……!!」

 アルヴィンが驚愕に目を見開く。

「うそぉ!?」

「ど、どういうことですかにゃ!?」

 エメラダとセリアが叫ぶ。
 敵を騙すには味方からだ。

「ネリスは既に俺の女なのさ。さっきのはギミックナイフ。この通り、俺の体には傷一つない」

「う、嘘をつくんじゃねぇ! ネリスがオレを裏切るはずが……」

「信じる信じないはお前の自由だ。しかし、これで人質は実質的に解放されたことになる。お前を守るものはもう何もないということだ」

 ミルキー、ルン、見知らぬ少女の3人は、壁際に拘束されたままだ。
 しかし電流スイッチをネリスが持っている今、実質的には解放されたと見なしてもいいだろう。
さて。
 アルヴィンを精神的に、そして肉体的にフルボッコにしてやるとするか。
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