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第5章

496話 ネリスの重要証言?

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「ふむ。実はだな……」

 俺はネリスに、ミルキーとルンが『毒蛇団』によって誘拐されたことを伝えた。
 そして、俺たちの中にスパイがいる可能性があること、この宿の中にも『毒蛇団』の息がかかった者がいるかもしれないことなどを説明する。

「そうですか……。ミルキー様とルン様がそのような目に遭われているとは……」

「ああ。だから、一刻も早く彼女たちを助け出さないといけない」

「承知いたしました。あたくしも微力を尽くさせていただきます」

 ネリスはそう言って、深く礼をした。

「ありがとう。それじゃあ――」

 いつまでも話しているわけにはいかない。
 こうしている間にも、ミルキーやルンが怖い重いをしているかもしれないのだ。
 俺はこの場を離れようとする。
 だが、それをネリスが引き止めた。

「あっ! さっそくですが、お耳に入れたい情報がありますわ」

「情報だと?」

 俺は足を止め、聞き返す。

「はい。実は先ほど、怪しい集団が路地裏を歩いているのを見ました」

「怪しい集団?」

「はい。人数は4人ほどでしたが、全員が黒いローブを着ていました。顔もフードで隠しておりまして、一見すると盗賊のような雰囲気でしたね」

「ほう」

 4人か。
 しかも、全員黒ずくめ。
 『毒蛇団』の特徴と一致するな。

「そして、彼らは女性を連れていたような……。一瞬だったのであまり意識していなかったのですが、言われてみればあれはミルキー様とルン様だったかもしれません」

「……それが本当なら、重要な証言だな。それで、そいつらはどっちの方向に?」

 実際には、俺の『パーティメンバー設定』の効力により大まかな方向はわかっている。
 だが、こうして口頭でも証言を得られれば、より情報の確度が上がるというわけだ。

「ええっと、西の方角へ行ったと思います」

 ――西だと?
 俺の『パーティメンバー設定』の情報と真逆である。

「それは確かなのか? 方角を勘違いしているとか、あるいはそもそもミルキーやルンを見間違えたとか」

 勘違いぐらい、誰でもある話だ。
 俺のために情報提供をしてくれたのだから、悪気のない勘違いには目をつむるつもりである。

「いえ……今、改めて思い出しましたわ。あれは確かにミルキー様とルン様でした。それに、方角も西で間違いありませんわ」

 ネリスは断言した。
 その目は俺を力強く見つめていたが、俺が視線を合わせると若干ながらも逸らした。

「――そうか。残念だよ、ネリス」

「は? 残念、とは……?」

「お前を『毒蛇団』の重要参考人として捕縛し、尋問する。楽に死ねると思うなよ」

 俺は剣を抜き、ネリスの首筋に突きつける。
 彼女は目を大きく開き、驚愕の表情を浮かべていたのだった。
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