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第5章

494話 力

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 ローズが冷静に口を開く。

「しかし、拠点の場所がわかっているのでしょうか? 彼らがどこへ逃げたかもわからない状況では、探索範囲を広げて探すしかないと思いますが……」

「む、そうだな……。だが、また別行動を取ることは避けるべきか……」

 ミルキーとルンをここに置いてきたのが間違いだったと言わざるを得ない。
 俺たち『悠久の風』の実動隊を行動を共にした方が、下手に待っているよりも安全だったか?
 だが、その場合はあの崩落で逃げ切れなかった可能性もある。
 彼女たちのジョブレベルはまだ低いので、さほど俊敏な動きはできないからな。

「ご主人様。あの力は使われないのでしょうか?」

「あの力? ……ああ、そう言えば”あれ”があったか」

 シルヴィが言っているのは、『パーティメンバー設定』によってパーティを組んだ者同士の位置がおぼろげに分かる能力のことだ。
 ミルキーとルンは、冒険者ギルドに『悠久の風』としては登録していない。
 しかし一方で、俺のシステムスキル上では『悠久の風』として登録している。
 お互いの位置がおぼろげに分かる能力において、しっかりと適応対象となっている。

「――ふむ。あっちの方向だな」

 この力は、MSCのゲーム世界でも存在していた。
 しかし、フルダイブゲームとしての没入感を損なわないために、位置把握能力は限定的なものに抑えられていた。
 RPGなどでたまにある『空から全体を見下ろすような地図上で、仲間のいる場所が光る点で表示される』というような便利なものではない。
 あくまで、『こっちの方向にいそうな気がする。なんとなくだけど』というレベルの能力である。
 距離感もボンヤリとしか掴めない。
 まぁこれはこれで、ないよりはあった方が遥かに便利なものなのだが。

「……えっと、そちらの方角は……」

「スラムの方向ですにゃ。やはり、ミルキーさんとルンさんは『毒蛇団』のアジトに連れていかれたようですにゃ?」

 エメラダとセリアがそう指摘する。

「おそらくそうだが、確証は持てないな。まぁ、注意しながらみんなで向かってみるしかないだろう」

 この場からの感覚では、スラムの方面にいるということしか分からない。
 もしかしたら、スラムに入る一歩手前の一般街にいるかもしれない。
 あるいは町の外壁を超えて外に出た可能性もある。

「すぐに出発しよう。必ずミルキーとルンを取り返すぞ」

 俺は仲間たちにそう告げる。

「了解なのです!」

「へへっ。あたいたちを本格的に敵に回したことを、後悔させてやろうぜ!」

 ミナとリンがそう言うと、他のメンバーたちも無言でうなずいた。
 こうして、俺たちは『毒蛇団』の掃討に向けて再出発することにしたのだった。
 ――あれ?
 そう言えば、スパイは結局誰だったんだ?
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