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第5章

493話 よくも俺の女を

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 拠点である宿屋に帰ってきた俺たちは、待機メンバーのミルキーとルンがいなくなっていることに気がついた。

「……よく見れば、争ったような跡があるな」

 俺はそう呟く。
 荒れているのは、『毒蛇団』が貴重品を漁ったからだと思っていた。
 だが、実際は違うようだ。
 ベッドは粉砕されているし、床には刃物で斬りつけたかのような傷が無数についていた。
 これはつまり――

「ミルキーさんたちは、ここで戦闘をしたのです。それも、かなり激しい戦いだったようなのです」

「ルンも雷魔法で応戦したみたいだぜ。ほら、壁が焦げてやがる」

 ミナとリンがそう指摘する。
 ミルキーとルンのジョブはまだまだ育成中だ。
 とりあえず、ファーストジョブは本職でもある『鍛冶師』と『料理人』に設定し、レベルを優先的に上げている。
 そして、セカンドジョブにはそれぞれ『槌士』と『雷魔法使い』を設定していた。
 俺たち『悠久の風』の実動隊と比べるとまだまだ弱いが、最低限は戦える。

「ふむ……。ミルキーとルンがスパイだというのは濡れ衣だったか」

 おそらく、突入してきた『毒蛇団』に抵抗したのだろう。
 下っ端戦闘員程度なら、彼女たちでも撃退はできたはず。
 だが、Aランク冒険者相当の実力を持つ『毒霧』のアルヴィンや、あるいはそれに続くレベルの幹部クラスが出てきたのかもしれない。
 それで、やられてしまったというところだろうか。
 しかし、それにしても――

「よくも俺の女を……。奴ら、許さねぇ……!!」

 俺は怒っていた。
 『毒蛇団』は俺の大切な仲間に手を出したのだ。

 当初の俺は、そこまで奴らの掃討に気合いを入れてはいなかった。
 ウルゴ陛下に指示されたから適当にこなしてやろう。
 それでまた地位や名声を得られれば、さらにハーレムも増やせる。
 そんな軽い気持ちだった。
 しかし、ここまでのことをされては、そのゆるい考えは捨てるざるを得ない。

「絶対に裁きを与えてやる……! 俺の女たちを傷つけた報いを受けさせてやるぜ!」

「コウタ殿……。お気持ちはよくわかりますが、落ち着いてください」

 ローズが声をかけてきた。

「わたくしたちがすべきことは、まず何ですか?」

「決まっている。奴らの拠点を今度こそ見つけ出し、殲滅するんだ」

 俺は即答した。
 奴らは俺の仲間に危害を加えた。
 もはや情けをかける必要はない。
 俺はそう考えたのだった。
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