489 / 1,251
第5章
489話 スパイは誰だ!?
しおりを挟む
『毒蛇団』は俺たち『悠久の風』を罠にはめ、岩盤と建物の崩落で始末しようとしてきた。
何とか無事に脱出した俺たちを待っていたのは、襲撃者たちだった。
それらすら撃破した俺たちは男を尋問しようとするものの、『毒霧』のアルヴィンの毒針によって口封じに始末されてしまった。
捜査は振り出しに戻ることになる。
また聞き込みなどから始めてもいいのだが、それ以上に大切なことがある。
「非常に残念なことだ。俺たちの中に、『毒蛇団』のスパイがいるようだな」
俺はそう指摘する。
今回、この場所を立ち入り捜査することは、誰にも言っていなかったことだ。
宿屋の2階を丸ごと貸し切り、重要な打ち合わせの際にはティータの結界魔法により防音処理を施していた。
『闇蛇団』のメンバーが外で張り込んでいたり、宿屋の1階にいた女将が金で情報を売るために聞き耳を立てていたりしたとしても、俺たちの声が聞こえるはずがない。
「わ、わたしは無実です! ご主人様を裏切るくらいなら、死にます!!」
「ああ。俺もシルヴィのことは疑っていない」
俺のチートスキル『パーティメンバー設定』を使用するためには、俺と一定以上に親しくなる必要がある。
今の『悠久の風』のメンバーは、全員が条件を満たしている。
そんな中でもシルヴィは一番の古株だ。
しかも、最初の出会いにおける関係性は『主人と奴隷』であり、名目上は今もその関係が続いている。
そして、彼女としては、俺のことを恋人として慕い仲間として大切にする以上に、主人である俺に対して絶対的な忠誠を誓ってくれている様子だ。
だから、俺はシルヴィがスパイであるとは思わない。
もし彼女がスパイなら、俺はこの世界の全てが信じられなくなる。
「い、言っておくけど僕も違うよ?」
「ボクもなのです。コウタくんとは一蓮托生なのです」
「へへっ。コウタっちに付いていけば美味い料理に出会う機会も多いし、裏切るメリットはねぇよな」
ユヅキ、ミナ、リンが順に否定する。
「……ん。ティータも違う。ティータとコウタちゃんは人族とエルフの架け橋になり得る存在。そんなことをするはずがない……」
「わたくしもですわ。自力で爵位を得るほど有望な男性と関係を持てたことを、誇りに思っています」
ティータとローズが俺への好意を示す。
「もちろんだとも。みんなのことを疑うわけがない」
みんなそれぞれ、俺とは深く長い付き合いだ。
信頼しているし、大切な仲間だと思っている。
だからこそ、彼女たちに疑惑の目を向けるなんて不誠実な真似はできない。
「じゃあ誰が……?」
ユヅキがそう言ったとき、シルヴィがハッとした表情になる。
その視線はグレイスに向けられていた。
俺もつられて彼女に視線を向けたのだった。
何とか無事に脱出した俺たちを待っていたのは、襲撃者たちだった。
それらすら撃破した俺たちは男を尋問しようとするものの、『毒霧』のアルヴィンの毒針によって口封じに始末されてしまった。
捜査は振り出しに戻ることになる。
また聞き込みなどから始めてもいいのだが、それ以上に大切なことがある。
「非常に残念なことだ。俺たちの中に、『毒蛇団』のスパイがいるようだな」
俺はそう指摘する。
今回、この場所を立ち入り捜査することは、誰にも言っていなかったことだ。
宿屋の2階を丸ごと貸し切り、重要な打ち合わせの際にはティータの結界魔法により防音処理を施していた。
『闇蛇団』のメンバーが外で張り込んでいたり、宿屋の1階にいた女将が金で情報を売るために聞き耳を立てていたりしたとしても、俺たちの声が聞こえるはずがない。
「わ、わたしは無実です! ご主人様を裏切るくらいなら、死にます!!」
「ああ。俺もシルヴィのことは疑っていない」
俺のチートスキル『パーティメンバー設定』を使用するためには、俺と一定以上に親しくなる必要がある。
今の『悠久の風』のメンバーは、全員が条件を満たしている。
そんな中でもシルヴィは一番の古株だ。
しかも、最初の出会いにおける関係性は『主人と奴隷』であり、名目上は今もその関係が続いている。
そして、彼女としては、俺のことを恋人として慕い仲間として大切にする以上に、主人である俺に対して絶対的な忠誠を誓ってくれている様子だ。
だから、俺はシルヴィがスパイであるとは思わない。
もし彼女がスパイなら、俺はこの世界の全てが信じられなくなる。
「い、言っておくけど僕も違うよ?」
「ボクもなのです。コウタくんとは一蓮托生なのです」
「へへっ。コウタっちに付いていけば美味い料理に出会う機会も多いし、裏切るメリットはねぇよな」
ユヅキ、ミナ、リンが順に否定する。
「……ん。ティータも違う。ティータとコウタちゃんは人族とエルフの架け橋になり得る存在。そんなことをするはずがない……」
「わたくしもですわ。自力で爵位を得るほど有望な男性と関係を持てたことを、誇りに思っています」
ティータとローズが俺への好意を示す。
「もちろんだとも。みんなのことを疑うわけがない」
みんなそれぞれ、俺とは深く長い付き合いだ。
信頼しているし、大切な仲間だと思っている。
だからこそ、彼女たちに疑惑の目を向けるなんて不誠実な真似はできない。
「じゃあ誰が……?」
ユヅキがそう言ったとき、シルヴィがハッとした表情になる。
その視線はグレイスに向けられていた。
俺もつられて彼女に視線を向けたのだった。
16
お気に入りに追加
1,089
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?
澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果
異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。
実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。
異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。
そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。
だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。
最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
神様との賭けに勝ったので異世界で無双したいと思います。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。
突然足元に魔法陣が現れる。
そして、気付けば神様が異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
もっとスキルが欲しいと欲をかいた悠斗は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―――
※チートな主人公が異世界無双する話です。小説家になろう、ノベルバの方にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる