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第5章

487話 紛れ込んでいる

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「そんなこと知るかよ。俺は上からの指示に従っただけだ」

「指示?」

「ああ。上の連中は、ここにお前たちが来ることを把握していた。そこで、お前たちを一網打尽にするために、このアジトを爆破することにしたのさ」

「ふむ……。話は分かったが……。しかしどうしても納得はできないな。俺たちから情報が漏れるはずがない」

 意図的に情報を共有していたのは、『悠久の風』の面々のみ。
 彼女たちが情報を漏らすことはあり得ない。
 残る可能性としては、俺たち『悠久の風』の拠点である宿屋周囲に張り込みをしていて、俺たちの会議を盗み聞きしていたぐらいだろうか。

 だが、その可能性も低い。
 なぜなら、重要な打ち合わせの際には『結界魔法使い』のティータが周囲に防音処理を施していたからだ。
 宿屋の外へはもちろん、例えば階下の宿屋店員にすら会話の声は聞こえていなかったはずである。

「へへっ。とんだ間抜けもいたもんだよなぁ!」

「……なんだと?」

「お前たちの仲に、紛れ込んでいることにも気付いていないんだからな!」

「紛れ込む? 何がだ?」

「言わねぇと分からねぇか? そりゃもちろん、スパ――ぐあっ!?」

 男は言葉の途中で悲鳴を上げた。

「シルヴィ?」

「いえ、わたしは何もしていませんが……」

 てっきりシルヴィがまたナイフを突き刺したのかと思ったが、違った。
 男が突然悲鳴を上げた理由はいったい――

「コウタ親分! その男の首を見てくれ!!」

「むっ!? こ、これは針か!?」

 男の首筋に小さい針が突き刺さっていた。
 それは何の変哲もない針だったが、どこか不気味な雰囲気を放っている。

「これはいったい……?」

 俺はとりあえずその針を抜こうとする。

「お待ちください! それに触れてはいけません!!」

「ローズ?」
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