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第5章

476話 グレイスとエメラダ

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 エメラダがグレイスを追及している。

(グレイスは過去のことを過剰には気にしていない。直接的な殺人は犯していないというのが大きな理由だろうが……。それでも、普通は少しぐらい気にするよな。いい性格をしているよ、まったく……)

 断っておくが、俺は今さらグレイスの過去の罪をとやかく言うつもりはない。
 美少女というのは、存在するだけで大抵のことは許されるのだ。
 だが、それはそれとして――

「な、何が言いたいんだよ? 俺が盗賊について詳しければ、何かマズいことでもあるってのか?」

 グレイスは顔に冷や汗をかきつつ、エメラダに問い返す。
 エメラダの加入時期はグレイスよりも後なので、グレイスが元盗賊ということをエメラダは知らない。
 そんなエメラダは、『毒蛇団』によって奴隷に堕とされた過去がある。
 俺によって購入されたのでギリギリセーフといったところだが……。

 それでも、思うところはあるのだろう。
 普段から、盗賊団の処遇については厳しいことを言う傾向にある。

「……えっと。そこまでは言っていませんけど。でも、違和感がありますね……」

「い、違和感だって? 俺は無実だ! かつて盗賊行為をしていたことなんか――」

「あ、わかりました! グレイスさんも、あたしのように盗賊に恨みがおありなんですね!」

「えっ!?」

「あれ? 違いましたか?」

「あ、えっと……。そ、そそそうだな。俺も盗賊には恨みがあるんだよ!」

「なーんだ、それならそうと早く言ってくださいよ。盗賊は害虫みたいな存在ですからね。皆殺しです」

「ひぃっ!?」

「……? なぜ、グレイスさんが怯えられるのですか? そう言えば、先ほど何やら言いかけていたような……。かつて盗賊行為を――」

「い、いやいやいや! 大丈夫だ! 俺もエメラダに同意見さ! 盗賊は皆殺しにしよう!!」

「ありがとうございます。やっぱり、グレイスさんは頼りになります!」

「う、うん……」

 こうして、エメラダはグレイスに対して妙な親近感を覚えてしまった。
 一方のグレイスは、内心でかなり焦っているようだ。
 顔にも冷や汗がびっしりである。
 こんなことなら、いっその事バレた方が精神的には楽だったかもな。

 俺がそんなことを考えたときだった。
 ドゴーン!!!
 突如、大きな音が聞こえた。

「な、なんだ!?」

 音の発生源は、俺たちが頭上。
 つまり――

「ま、マズいよみんな! 天井が崩れてくる!!」

「ひえぇっ! ですにゃ!!」

「生き埋めになっちゃうのです!」

 ユヅキの言葉に、セリアとミナがそう叫んだのだった。
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