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第5章

474話 殺された奴隷たち

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「それにしては、殺し方がおかしい。首筋を切ったら、出血であっさりと死んでしまう。尋問どころじゃねぇ」

「なるほど。言われて見ればそうだな……」

 俺は納得する。
 この男たちは、内部抗争で殺されたわけではなさそうだ。

「なら、こいつらは何なんだ?」

「たぶん、『毒蛇団』が抱えていた奴隷だろうな」

「なぜ奴隷をわざわざ殺す? 売れば一財産になるだろうに」

「売るにもタイミングってものがある」

「しかし、殺すぐらいなら二束三文でも適当に売り払えば……」

「おそらく違法奴隷なんだよ。コウタ親分がウルゴ陛下から勅命を受けたのは有名だからな。違法奴隷売却時に足がつくリスクよりも、秘密裏に処理した方がいいと判断したんだろうぜ」

「……なるほどな。筋は通っている」

 俺はグレイスの言葉を聞いて納得した。
 原因は俺か。
 ウルゴ陛下の勅命を受けた俺が動いているのは、奴らも知っているはず。
 足がつかないように奴隷を殺処分することもあり得るだろう。

 この殺された奴隷たちも、俺という存在がなければもう少し長生きできたのかもな。
 間接的に見れば、俺が殺したようなものと言えるかもしれない。
 ま、さすがにここまで遠い関連性なら、責任もさほど感じないが。
 バタフライ・エフェクトみたいな話だからな。

「こう言っては何だが、殺されたのがオッサンばかりで良かったよ」

 俺はついそんなことを思ってしまう。
 繰り返すが、奴隷たちが殺されたことに対して俺に直接的な責任はない。
 悪いのは『毒蛇団』の連中だ。

 しかしそれはそれとして、殺されたのが美少女奴隷だったのならば俺は後悔しただろう。
 他にやりようがなかったのか反省したはずだ。

 今回の掃討作戦に向けて、俺は事前に様々な手を打った。
 ミスリルを用いた新たな武具の製作、ミルキーやルンの勧誘、『悠久の風』全体の基礎レベル上げ、町の衛兵たちへの指示、などなど……。

 これらは、現実的に考えて必要なことだった。
 しかし、例えばこれまでの冒険でもっと精力的にレベル上げをしていればどうだっただろうか?
 事前の準備なく、俺が単身で『毒蛇団』を殲滅することも可能だったかもしれない。

「コウタ親分にとってはそうだろうな。それに、考えるのはみんな似たようなものさ」

「どういうことだ?」

 俺はグレイスに、そう問いかけたのだった。
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