469 / 1,331
第5章
469話 宿屋の少女
しおりを挟む
「おーい! 若女将はいるか?」
俺は宿屋の若女将を呼ぶ。
初回は、後処理を両親が行ったそうだが……。
治療に必要なこととはいえ、娘に付着した俺の体液を拭き取るのはなかなかのストレスがあったことだろう。
そのため、この数日は両親ではなく宿屋の若女将にチセを任せていた。
治療の時間帯は、両親には適当に外出してもらっている。
「は、はい……。あの……」
俺の声に反応して、一人の少女が顔を出した。
彼女は若女将ではなく、一般の従業員の子だな。
「おや? 若女将はいないのか?」
「えっと……その……少し外出しておりまして……」
申し訳なさそうに言う少女。
「そうか。困ったな。俺がこの時間に来ることは伝えていたはずなのだが……」
「あ、あうぅ……。その、すみません……」
少女が半泣きになる。
「ああ、責めているわけじゃないんだ。ただ、部屋の掃除を若女将に頼みたかっただけなんだ」
俺はそう言う。
もちろん、自分の治療行為の後始末は自分でするべきだという考え方もある。
だが、俺はこれでも『毒蛇団』の件で忙しい。
わずかな時間を見つけてチセの治療時間を確保しているのだ。
人に任せられるところは人に任せるべきだろう。
ただ、なにせ状態が状態だからな。
今のチセの状態は、未成年にはとても見せられない。
若女将でさえ、顔を赤らめながら後始末をしていたぐらいだし。
「…………」
俺の言葉を聞いた瞬間、目の前の少女は目に涙を浮かべて固まってしまった。
「あ、あれ? どうしたんだ?」
「うっ……ぐすん……ひぐっ……ごめんなさいぃ~!」
「ちょっ!?」
次の瞬間、少女の目から大粒の涙がこぼれ落ちると、その場に崩れ落ちてしまったのだった。
俺は宿屋の若女将を呼ぶ。
初回は、後処理を両親が行ったそうだが……。
治療に必要なこととはいえ、娘に付着した俺の体液を拭き取るのはなかなかのストレスがあったことだろう。
そのため、この数日は両親ではなく宿屋の若女将にチセを任せていた。
治療の時間帯は、両親には適当に外出してもらっている。
「は、はい……。あの……」
俺の声に反応して、一人の少女が顔を出した。
彼女は若女将ではなく、一般の従業員の子だな。
「おや? 若女将はいないのか?」
「えっと……その……少し外出しておりまして……」
申し訳なさそうに言う少女。
「そうか。困ったな。俺がこの時間に来ることは伝えていたはずなのだが……」
「あ、あうぅ……。その、すみません……」
少女が半泣きになる。
「ああ、責めているわけじゃないんだ。ただ、部屋の掃除を若女将に頼みたかっただけなんだ」
俺はそう言う。
もちろん、自分の治療行為の後始末は自分でするべきだという考え方もある。
だが、俺はこれでも『毒蛇団』の件で忙しい。
わずかな時間を見つけてチセの治療時間を確保しているのだ。
人に任せられるところは人に任せるべきだろう。
ただ、なにせ状態が状態だからな。
今のチセの状態は、未成年にはとても見せられない。
若女将でさえ、顔を赤らめながら後始末をしていたぐらいだし。
「…………」
俺の言葉を聞いた瞬間、目の前の少女は目に涙を浮かべて固まってしまった。
「あ、あれ? どうしたんだ?」
「うっ……ぐすん……ひぐっ……ごめんなさいぃ~!」
「ちょっ!?」
次の瞬間、少女の目から大粒の涙がこぼれ落ちると、その場に崩れ落ちてしまったのだった。
17
お気に入りに追加
1,096
あなたにおすすめの小説
異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?
澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果
異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。
実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。
異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。
そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。
だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。
最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる