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第5章

465話 この変態め!

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 チセへの治療行為に対し、父親が文句を言って詰め寄ってきた。

「はぁ……」

 俺はため息を吐いてから、父親の手を振り払う。

「過剰魔力症の治療だけじゃなくて、他の部位も健康に保つために必要な処置だよ。高位魔法使いの体液は、上手く扱えば人体にとって有用な回復薬になるからな」

 チセの魔門の周辺は、俺の体液で十分に潤っている。
 ついでに、魔門関係以外の箇所も悪そうなところには一通り治療を施しておいた。

「そ、そんなことのために……!」

「そんなこととは何だ? 過剰魔力症が治ったとしても、他の部位が悪化したら意味ないだろうが」

「だ、黙れ! この変態め! チセに近寄るな! この子から離れろ! 出ていけえぇー!」

 父親が拳を振り上げる。

「……っ!」

 母親が咄嵯に手を伸ばして父親を止めようとした。
 だが、遅い。
 俺は既に魔法を発動させている。

「……っ!? ぐあっ!」

 父親は吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

「……っ!」

 母親は腰が抜けたのか、その場にへたり込む。

「まぁ落ち着いてくれよ。俺はこれでも、お前たち一家のことを思って治療してやってるんだぜ?」

 俺はそう言って、二人に微笑みかける。

「何が治療だ! 娘にあんなことをしておいて……!」

「ほら、これをやろう。この金で、一般街にある『月夜亭』という宿屋に泊まるといい。そこの女将に頼んで、親子三人でゆっくりと休める部屋を用意してもらえ」

 俺はそう言いつつ、金貨の入った袋をテーブルの上に置いた。

「「……」」

 2人は無言のまま、俺と袋を見比べている。

「あぁ、心配することはないぞ。もちろん、怪しい金なんかじゃない。俺が個人的に用意したものだ。遠慮なく受け取ってほしい」

 俺は笑顔で言う。

「「……」」

 だが、両親は相変わらず無言だ。

「おや? 受け取らないのか? それなら、仕方ないな。それでは、このお金は俺が預かっておくとしよう」

「……う、受け取ります」

 やがて、母親が恐々とした様子で言ったのだった。
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