社畜だけど転移先の異世界で【ジョブ設定スキル】を駆使して世界滅亡の危機に立ち向かう ～【最強ハーレム】を築くまで、俺は止まらねぇからよぉ！～

第５章

４５７話 過剰魔力症の治療に向けて

　俺はスラムの怪しい家に立入り捜査をしている。

「なるほど。それならば合点がいく。つまり、お前たちは魔素が多い地域から引っ越してきたわけか」

「そうだ」

　魔法系ジョブは取得難易度が高い。
　この少女――チセが魔法を使えなくとも仕方がない。
　そして、ＭＰの放出機能の欠陥については、先天的なものなのでどうしようもない。
　残る対処手段は、魔素が多い地域から少ない地域へ引っ越すこととなるわけだ。

「なるほどな。納得したよ」

　Ｄランク冒険者として最低限の稼ぎはあるはずなのに、一般街に住めずスラムに住んでいる理由。
　それほどの資金難なのに、引っ越しを強行した理由。
　そして、引っ越して半年ほどが経過しているのに、まだ一般街への引っ越しが叶っていない理由。
　我が子が過剰魔力症になっていたのであれば、それも当然だろう。

「お前たちの疑いは晴れた。……と言いたいところだが」

「ま、まだ何かあるのか！？」

「この少女――チセに、直接話を聞いてみたい。お前たちが言っていることは事実なのだろうが、念のためだ」

「そ、それぐらいなら……。しかし、次にいつ起きるかは読めないぞ？」

　過剰魔力症は、放置していると寝たきりになる。
　やがて衰弱し、死に至る。
　だが、中程度の症状であれば常人よりも睡眠時間が長くなる程度だ。
　この様子だと、おそらくは一日あたり１４時間から１８時間の睡眠といったところか。
　魔力の少ないエルカの町で療養していれば、少しずつ短くなっていき、やがて常人と同程度の睡眠時間となるだろう。

「大丈夫だ。俺には、過剰魔力症に対する秘策がある」

　過剰魔力症は、ＭＳＣにも存在していた病だ。
　ノンプレイヤーキャラクターであれば、設定通りの病状が出る。
　プレイヤーキャラクターに対してはさすがに緩和された病状となっていたが、それでも大幅な行動デバフとなるため優先的に治療されてきた病だ。
　ここは、俺のＭＳＣの知識でチセの病状を和らげてやることにしよう。

「すやすや……」

　チセは、ベッドの上で静かに寝息を立てている。

「ふむ……」

　俺はその可愛らしい顔を見ながら、チセの異常を確認する。
　まずは、手に触れる。
　暖かく柔らかい手だ。
　俺はその手を握ってみる。
　――が、握り返される気配はない。

　次は頬に触れてみる。
　ぷにっとしていて、触り心地が良い。
　――が、やはり反応はなかったのだった。