上 下
451 / 1,049
第5章

451話 下着類

しおりを挟む
 うーん……。
 この様子だと、本当に無関係なのか?
 だがそれはそれとして、『1年ほど前まではこの家に怪しい奴らが出入りしていた』というのはそれなりに確度が高い情報だ。
 先ほど締め上げたチンピラの言葉に加えて、この夫妻が半年ほど前に引っ越してきたという証言もあるからな。

「次は……ここの引き出しの中を確かめさせてもらおう」

 俺はリビングの隅に置いてある引き出しに目を付けた。

「ま、待てっ! そこは……」

「んん? どうかしたか?」

「そこに怪しいものは入っちゃいねえよ! ただの日用品が入っているだけだ!」

「ほう。なるほど。ならば、俺が見ても問題ないな」

 この男の焦りよう……。
 なんとなく怪しい気がする。
 俺はゆっくりと引き出しを開く。
 1つ目、3つ目の引き出しは普通に日用雑貨が詰まっていた。
 しかし3つ目は違った。

「こ、これは……!」

「あっ!」

 女が声を上げる。
 だが、もう遅い。
 俺はそれを見つけてしまった。

「ふむ……。下着類が多いようだな……」

 3つ目の引き出しには、女性物の下着が詰め込まれていた。
 住居は妥協しても、服装には妥協できなかったらしい。
 なかなかに色とりどりの下着が並んでいた。

「あ、あああ……」

「しかも、随分と可愛らしいデザインのものが多いじゃないか」

 俺はあえて嫌味ったらしく言ってやる。
 女性にセクハラする趣味はないが、これは取り調べも兼ねているからな。
 感情を揺さぶることで、何か有益な情報が得られるかもしれない。

「くんくん……。ほぉ、しっかりと洗っているようだが……。少しだけ匂いが残っているな。悪くない」

 俺はわざと鼻を鳴らして、女性の方を向く。

「ひぃっ!」

 女性は怯えた表情を浮かべながら、俺の顔を見つめ返してきた。
 その目は涙で潤んでいる。

「おい、それ以上俺の女を辱めてみろ。ただじゃおかねぇからな」

 男がそんなことを言ってくる。

「ふん……。まだ立場が分かっていないようだな」

 俺は男に向かって殺気を放つ。

「ぐっ……。お、お前は一体何がしたいんだ!?」

「決まっているだろう。俺はお前たちの無実を証明するために、徹底的に調べ上げようとしているのだ」

「だから、俺たちは何もしていないと言っているだろう!?」

「それを今から証明してもらう」

 俺は引き出しに入っていた下着を手に取る。
 そして、女の方へと歩いていくのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おぽこち編〜♡

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:397pt お気に入り:5

自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,009pt お気に入り:2,570

カンパニュラに想いを乗せて。

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

異世界もふもふ召喚士〜白虎と幼狐と共にスローライフをしながら最強になる!〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:596pt お気に入り:1,455

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:65

笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:25

採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

SF / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:1,625

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,514pt お気に入り:13,936

処理中です...