上 下
445 / 1,049
第5章

445話 スラムへ

しおりを挟む
 俺たち『悠久の風』は4つの班に分かれて行動を開始した。
 俺は第4班として単独行動だ。

「さっそく、スラム街へ向かうか」

 スラム街の中は薄暗い。
 日当たりの悪い場所が多いのだ。
 俺はそんな路地の中へと進んでいく。
 しばらくすると、前方に複数の人の気配を感じ取った。
 どうやら向こうもこちらの存在に気付いたようだ。

「おい、あいつは……」

「間違いねえ……。『悠久の風』の……」

「『悠久の風』のコウタじゃねぇか!」

「ひひっ。まさか、こんな場所で会うとはなぁ」

 3人ともボロ切れのような服を身にまとっている。
 見るからにスラムの住民だな。

「おう。いかにも、俺は『悠久の風』のリーダー、コウタ・エウロス男爵だ」

 俺はとりあえずそう名乗っておく。

「くっくっく。不用心だなあ、お前さん。スラムに一人でノコノコやってくるなんてよぉ」

「ま、こっちとしては好都合だけどな」

「有り金全部置いてきな! そしたら命だけは見逃してやるぞ?」

 男たちはニヤリと笑いながら、武器を構えた。

「断る。俺は別にケンカしにきたわけじゃないんだ。お前ら、『毒蛇団』という組織を知らないか?」

 俺は単刀直入に切り出した。

「はあっ!?」

「知っていたら教えてくれ。そうすれば、命だけは見逃してやろう」

「ふざけんじゃねぇ!」

「舐めてんのか!」

「ぶっ殺す!」

 俺の言葉に激高した3人は、一斉に襲いかかってきた。
 交渉決裂か。

「しょうがないな。とりあえず、無力化してやるか」

 こいつら自身が『毒蛇団』の構成員であれば、別にぶち殺してもいいのだが……。
 現状ではまだ確信が持てない。
 俺はまず、一番近くにいた男の足を蹴り払った。

「ぐわっ」

 男が転倒する。

「この野郎!」

 もう一人の男の攻撃を回避しつつ、その顔面を殴る。

「げふっ」

 男は地面に倒れ伏した。
 気絶させただけだ。
 殺してはいない。

「クソが! てめぇ、よくも仲間を!」

 最後の一人はナイフを取り出した。
 そして、俺に向かって突き出してくる。

「おっと」

 俺はそれを軽く回避し、相手の手首を掴んだ。

「うおおお!」

 相手が強引に振りほどこうとする。
 だが、俺の手を振り払うことはできない。

「悪いが、これで終わりだ」

 俺は掴んでいた腕に力を込める。
 ボキッ。
 鈍い音が響いて、男の肘の関節が外れた。

「ぎゃああ!!」

 悲鳴を上げて転げる男。

「まだやるか? これ以上続けるなら……次は折る」

 俺は淡々と告げる。

「ひぃ……っ」

 男はガタガタ震えている。
 戦闘はこれでひと段落かな。
 アクティブスキルを使うまでもないザコだった。
 こいつらに聞き込みを続けてみよう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おぽこち編〜♡

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:397pt お気に入り:5

自由を求めた第二王子の勝手気ままな辺境ライフ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,980pt お気に入り:2,570

カンパニュラに想いを乗せて。

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:10

異世界もふもふ召喚士〜白虎と幼狐と共にスローライフをしながら最強になる!〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:617pt お気に入り:1,455

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:65

笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:25

採取はゲームの基本です!! ~採取道具でだって戦えます~

SF / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:1,625

異世界転生令嬢、出奔する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,677pt お気に入り:13,936

処理中です...