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第5章
399話 ダンシャク?
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俺はミルキーとの将来の話をしている。
『この工房は放棄してもらうことになると思う』と伝えたところ、ミルキーが怒ってしまった。
「落ち着いてくれ。何も、軽い気持ちで言ったわけじゃないんだ」
「じゃあ、どんなつもりなんだよ」
「実は、今回の『毒蛇団』の掃討作戦が終わったら、『悠久の風』の拠点を移す予定があるんだ」
「えっ? そうなのかい?」
ミルキーが驚きの表情を浮かべる。
「ああ。だから、ミルキーにはその新拠点に工房を構えてほしいんだ。もちろん、持ち運びができるような施設や道具は俺が責任を持って運搬するし、不可能なものは俺が資金を出して新たに用意する」
「へえ……。ずいぶんと太っ腹なんだな。さすがはAランク冒険者ってところか。迷宮の踏破者ともなれば、金を持っているんだな」
「そういうことだ。どうだろうか?」
「いいぜ。引き受けた!」
ミルキーは笑顔で快諾してくれた。
「ありがとう。助かるよ」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
よかった。
これで話はまとまった。
「でも、アタシにできるかなぁ。その町にはその町のやり方もあるだろうしさ……」
「それは大丈夫だ。なにせ、その町はこれから作られるからな。面倒くさいルールやしきたりなんて、何もない」
「はぁ? これから作るって……。ああ、なるほどな」
ミルキーは一瞬だけ怪訝な顔をしたが、すぐに得心したように微笑む。
「コウタ坊はAランク冒険者だもんな。新天地の開拓のために、雇われたってことか」
「うーん……。間違っているわけではないが、少し正確ではないな」
「え? どういうことだ?」
「新天地の開拓は、俺が主導になって行うんだ」
俺はそう説明する。
「おう。だから、領主さんから依頼されてるんだろ?」
「違う。俺の依頼主は、ウルゴ陛下だ」
「ウルゴヘイカ?」
「知らないのか? このバルドゥール王国の国王陛下だ」
「コクオウヘイカ? ……国王陛下か! マジかよ……。それ、本当なのか?」
ミルキーの顔色が変わる。
「嘘をつく必要もないさ」
「しかしなんでまた、国王陛下が直々にコウタ坊に依頼したんだ?」
「ん? どういう意味だ?」
「だってよ。いくらAランク冒険者といったって、領地開拓を直接依頼するのはおかしいだろ? そういうのは、普通は貴族に依頼するもので……」
ミルキーが困惑した様子で言う。
「あれ? 言ってなかったか?」
「何を?」
「俺は、つい先日に男爵位を授かったんだ」
「ダンシャク?」
「コウタ・エウロス男爵と名乗ることを許されている。領地はまだないが、これから西部一帯を任される。開拓さえできれば、あとは自由にしていいらしい」
「……はあっ!?」
ミルキーが大きな声を上げた。
目を丸くして驚いている。
「ミルキー。君は貴族家当主の女となり、さらには御用達鍛冶師の地位さえ手に入れられるんだ。悪い話じゃないだろ?」
「……は、はああああぁっ!?」
ミルキーは一際大きく、素っ頓狂な叫び声を上げたのだった。
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告知です。
ノベルピアという新しい投稿サイトに本作を転載し、オープニングコンテストに応募中です。
コンテストの規約上、10000字ほどそちらで先行公開していくことになります。
(8/22現在はまだ転載途中で、最新話には追いついていません)
「続きが気になる」「サイトの垣根を超えて応援してあげる」と思っていただける方がいらっしゃいましたら、ぜひノベルピアでもお読みいただけたらと思います。
こちらでも引き続き毎日の更新を頑張りますので、よろしくお願いいたします。
『この工房は放棄してもらうことになると思う』と伝えたところ、ミルキーが怒ってしまった。
「落ち着いてくれ。何も、軽い気持ちで言ったわけじゃないんだ」
「じゃあ、どんなつもりなんだよ」
「実は、今回の『毒蛇団』の掃討作戦が終わったら、『悠久の風』の拠点を移す予定があるんだ」
「えっ? そうなのかい?」
ミルキーが驚きの表情を浮かべる。
「ああ。だから、ミルキーにはその新拠点に工房を構えてほしいんだ。もちろん、持ち運びができるような施設や道具は俺が責任を持って運搬するし、不可能なものは俺が資金を出して新たに用意する」
「へえ……。ずいぶんと太っ腹なんだな。さすがはAランク冒険者ってところか。迷宮の踏破者ともなれば、金を持っているんだな」
「そういうことだ。どうだろうか?」
「いいぜ。引き受けた!」
ミルキーは笑顔で快諾してくれた。
「ありがとう。助かるよ」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
よかった。
これで話はまとまった。
「でも、アタシにできるかなぁ。その町にはその町のやり方もあるだろうしさ……」
「それは大丈夫だ。なにせ、その町はこれから作られるからな。面倒くさいルールやしきたりなんて、何もない」
「はぁ? これから作るって……。ああ、なるほどな」
ミルキーは一瞬だけ怪訝な顔をしたが、すぐに得心したように微笑む。
「コウタ坊はAランク冒険者だもんな。新天地の開拓のために、雇われたってことか」
「うーん……。間違っているわけではないが、少し正確ではないな」
「え? どういうことだ?」
「新天地の開拓は、俺が主導になって行うんだ」
俺はそう説明する。
「おう。だから、領主さんから依頼されてるんだろ?」
「違う。俺の依頼主は、ウルゴ陛下だ」
「ウルゴヘイカ?」
「知らないのか? このバルドゥール王国の国王陛下だ」
「コクオウヘイカ? ……国王陛下か! マジかよ……。それ、本当なのか?」
ミルキーの顔色が変わる。
「嘘をつく必要もないさ」
「しかしなんでまた、国王陛下が直々にコウタ坊に依頼したんだ?」
「ん? どういう意味だ?」
「だってよ。いくらAランク冒険者といったって、領地開拓を直接依頼するのはおかしいだろ? そういうのは、普通は貴族に依頼するもので……」
ミルキーが困惑した様子で言う。
「あれ? 言ってなかったか?」
「何を?」
「俺は、つい先日に男爵位を授かったんだ」
「ダンシャク?」
「コウタ・エウロス男爵と名乗ることを許されている。領地はまだないが、これから西部一帯を任される。開拓さえできれば、あとは自由にしていいらしい」
「……はあっ!?」
ミルキーが大きな声を上げた。
目を丸くして驚いている。
「ミルキー。君は貴族家当主の女となり、さらには御用達鍛冶師の地位さえ手に入れられるんだ。悪い話じゃないだろ?」
「……は、はああああぁっ!?」
ミルキーは一際大きく、素っ頓狂な叫び声を上げたのだった。
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