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第5章

397話 年増

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 ミルキーへのアプローチを続けている。
 彼女は自分のことを『ガサツで乱暴な女』と評しているが、そんなことはない。
 ……とも言い切れないのだが、それを補って余りある魅力が彼女にはある。

「俺の女になれ、ミルキー。『悠久の風』の一員として、幸せな未来を約束しよう」

「…………」

 ミルキーは黙り込んでしまった。
 かなり悩んでいる様子だ。

「まだ、迷っているのか?」

「…………」

 ミルキーは答えない。
 ただ、じっと床を見つめている。
 そしてようやく、口を開いた。

「だ、だけどよ……。アタシは年増のオバサンなんだぞ……」

「……」

 ミルキーの告白に、俺は言葉を失った。
 年増?
 そうだっけ?

 彼女の外見年齢は、ミナよりも幼い。
 ドワーフ族であることを差し引いても、14歳前後にしか見えないが……。

「アタシはもう20歳を過ぎてるんだ。それなのに、ミナの方が鍛冶の腕は上だしよ……」

「昼にも言ったが、ミナが『聖鍛冶師』に転職できたのは、俺といっしょに冒険者活動をしたからだぞ」

 俺はそうフォローする。
 この外見で20歳を超えているとは衝撃的だが、今は置いておこう。

「いいや、以前からの話なんだ。ドワーフの村でも、ミナの方が評価が上だった」

「へぇ……」

 ミナやミルキーの故郷の村か。
 一度は行ってみたいかもしれない。

「だからこそ、このエルカの町にミナは自分用の工房を構えていたんだ。ミナが店を離れるって聞いて、ようやくアタシが代わりに店を持つことができた。アタシの才能は、ミナに劣る。それに、これまでに色恋沙汰の経験もない。そんなアタシがあんたの恋人になったって、迷惑をかけるだけだ」

「ミルキー……。君は勘違いしているようだな」

「えっ?」

「俺だって男だから、恋人には夢を見るさ。ただ、それは見た目じゃない。才能でもない。大切なのは人柄だ」

「人柄……?」

「ああ。ミルキーは誠実で優しい女性だ。そのことはすでに知っている」

「そ、そうか? 自分ではよくわかんねぇけどな」

「それに、ミルキーは可愛らしいじゃないか。その可愛らしさは、年齢とは無関係だと思う」

「か、かわっ!?」

「ミルキーは自分の容姿について自信がないような発言をしているが、俺はミルキーのことを可愛いと思っているし、魅力的だと思っている。そのことはわかってほしい」

「うぅ……。あ、ありがとよ……。なんか照れくせえな……。こんなこと言われたのは初めてだよ」

 ミルキーは顔を真っ赤にして俯いた。
 よしよし。
 好感触である。
 いよいよ大詰めだな。
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