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第5章

390話 って、騙されるか!

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 俺たち『悠久の風』は、ミルキーの工房を訪れている。
 材料について心配していたので、俺はその懸念を払拭してあげた。

「次は鍛冶費の件か」

「ああ。材料は持ち込みだから、その分は浮くけどよ。実作業にかかる費用は、流石に持ち出しじゃきついぜ」

 ミルキーがそう答える。

「そう言うなよ。俺とお前の仲じゃねえか」

「コウタ坊……」

 俺はミルキーのあごに手を添えてクイっと持ち上げる。
 そして、目を見つめながら言った。

「俺たちの愛の前では、金など些細なことだ。違うか?」

「……そうだな。アタシとコウタ坊の間には、金は要らねぇ」

 ミルキーが熱い眼差しを返し、そう返答し……。

「って、騙されるか!」

 ガツンッ!

「痛ったぁーっ!?」

 ミルキーの拳が、俺の脳天を直撃した。
 さすがにドワーフ族だけあって、かなりのパワーだ。

「何で殴んだよ!?」

「何でも何もあるかい! スキがあれば口説いてくるんじゃないよ! コウタ坊は、いつもそうだ。まったく……ミナもとんでもない男にホレたもんだよ。従姉妹として心配になる」

「確かに……。コウタくんの女好きは凄まじいのです。でも、ボクにはどうにもできないのです。ホレた弱みなのです」

 ミルキーとミナがため息をつく。

「ははっ。そんなにホメるなって」

「褒めてねぇよ!?」

 再びミルキーの鉄拳が飛ぶ。
 ゴチンと音が鳴って、俺の頭に激痛が走った。

「~~~っ!!」

「いいか? ミナを泣かしたら承知しねぇからな」

「うぅ……。分かった」

「本当に分かってんのか?」

「大丈夫だってば。俺は、女の子を傷つけるような真似はしない。俺はいつだって紳士だ」

「本当かぁ?」

「もちろんだとも」

 俺は胸を張って答える。

「ま、お前さんなら、確かにそうかもしれんな」

「その通り。俺はいつでもジェントルマンさ」

「ふふん。その言葉、忘れんじゃないよ」

「おう」

「それじゃあ、鍛冶費の話をしようじゃないか」

 ミルキーが腕を組んで、俺に告げる。

「アタシの見立てじゃあ、お前たち『悠久の風』全員分の武具を揃えるのに、2か月以上かかる」

「そんなにか?」

「アタシが1人で作業すればな。しかし今回は、ミナが一時的に復帰して手伝ってくれる。それなら工期を大幅に短縮できる」

「まぁ、そうだろうな」

 1人で2か月なら、2人なら1か月か。
 単純に考えればだが。

「……いや待てよ? ミナはジョブレベルが上がって『聖鍛冶師』になってるって言っていたな?」

「はいなのです。ミルキーさん」

「なら、むしろミナがメインでアタシが手伝いか。ミナが鍛冶の勘を失っていないかどうか次第だが、1か月以内の納品も可能かもしれねぇ」

 ミルキーがそう言う。
 この口ぶりだと、ミルキーのジョブはまだ『鍛冶師』なのだろう。
 彼女は鍛冶師の経験がそれなりにあるようだが、まだ10代だ。
 ミナよりも年下の従姉妹だし、上級ジョブに至っていなくて当然である。

 『鍛冶師』のミルキーと比べれば、『聖鍛冶師』のミナの方が技量は上になるはずだ。
 もちろんその作業スピードもミナの方が早いと思われる。
 2人掛かりで1か月以内というのも、現実的な話なのだろう。

「1か月か。もうちょっと早くできないか?」

「2人だとこれで限界だって。これでも無理してるんだぜ? 他ならぬコウタ坊からの依頼だからよ」

「ふうむ……」

 『毒蛇団』の掃討作戦に向けて、武具の類は早めに揃えておくに越したことはない。
 他にも、『悠久の風』のメンバー拡充や『毒蛇団』の情報収集を行うので、今すぐに必要というほどではないが……。
 何とか納期を早める手段はないだろうか?
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