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第5章
387話 ミルキーの工房
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俺たち『悠久の風』は、武具を新調するためにミルキーの工房に向かった。
厳密に言えばミナの工房だが、彼女が『悠久の風』に加入した今、従姉妹のミルキーが実質的な運営者だ。
「さあ、みんな。こっちなのです」
「ここがミナさんの鍛冶場ですかにゃ。噂には聞いていましたが、実際に来るのは始めてですにゃ」
セリアがそう言う。
彼女は元々冒険者ギルドの職員だ。
そのため、こういった冒険者に関連した場所にもある程度詳しいのだろう。
「おーい、なのです。ミルキーさん!」
「あいよー!」
ミナの声に、奥から元気な返事が返ってくる。
そして扉を開けて出てきたのは、褐色肌で短髪の少女だ。
年齢は15歳くらいである。
「おっ、今日は大勢だね。コウタ坊」
「ああ。今回は武具を一新しようと思っていてな。全員で来た」
前回来たときは、エメラダの武具を製作するときだったか。
俺とエメラダ、いつも俺に付いてくるシルヴィ、そしてミナを紹介するためにミナ。
その4人だけで来ていた。
「全員って言うと……10人か? この人数だと結構大変だよ。時間も掛かるし、何より費用が……」
「人手は大丈夫だ。ミナに手伝ってもらう。そうだろ? ミナ」
「はいなのです。むしろ、ボクがメインで作るのですよ」
俺の言葉に、ミナがやる気を見せる。
「ミナが? お前は鍛冶のブランクが……。いや、ジョブレベルが上がっているなら、ブランクで衰えた分を差し引いても、前よりは上達しているのか?」
「はいなのです。ボクの今のジョブは『聖鍛冶師』。かなりの武具を作れると思うのですよ」
「な、なにぃっ!? ミナが『聖鍛冶師』だとぉっ!?」
ミナが言ったジョブに、ミルキーが驚く。
『聖鍛冶師』は『鍛冶師』の上級ジョブだ。
極端に珍しいジョブではないはずだが、それでもまだ10代のミナが持っているというのは驚きなのだろう。
「い、いつの間にそんなジョブレベルを上げたんだ?」
「ミルキーさんも知っている通り、コウタくんといっしょに冒険者としてあちこち回っていたのですよ」
「だが、それにしたってよ……」
ミルキーは納得していない様子だ。
まあ、それはそうだろう。
『鍛冶師』のような生産系のジョブレベルを上げる方法は、主に2種類ある。
1つは、真っ当に生産行為を行うこと。
そしてもう1つは、魔物を狩ったりダンジョンを攻略したりして、魔力を吸収していくことだ。
前者がコツコツとレベルを上げる方法であるのに比べ、後者は一気にレベルが上がる可能性がある。
しかし、それにも限度というものがある。
冒険者について回っただけで短期間の内に上級ジョブの獲得に至ったと言われて、すぐに納得できるものではない。
「ミルキーさん、ひょっとして知らないのです? コウタくん、それにボクたち『悠久の風』の偉業を」
「へ? 知らねぇな。何かしたのか? そういや、ちょっと前に何か町が騒がしかったような……。それに関係しているのか?」
ミルキーが首を傾げる。
以前から思っていたのだが、彼女は職人タイプだな。
ショートカットの髪はボサボサだし、服装も適当だ。
肌にはあちこちに油汚れのようなものが付いている。
その上、俗世の出来事にも疎いらしい。
ふふふ。
俺たち『悠久の風』の活躍をドヤ顔で伝えさせてもらうことにしようか。
厳密に言えばミナの工房だが、彼女が『悠久の風』に加入した今、従姉妹のミルキーが実質的な運営者だ。
「さあ、みんな。こっちなのです」
「ここがミナさんの鍛冶場ですかにゃ。噂には聞いていましたが、実際に来るのは始めてですにゃ」
セリアがそう言う。
彼女は元々冒険者ギルドの職員だ。
そのため、こういった冒険者に関連した場所にもある程度詳しいのだろう。
「おーい、なのです。ミルキーさん!」
「あいよー!」
ミナの声に、奥から元気な返事が返ってくる。
そして扉を開けて出てきたのは、褐色肌で短髪の少女だ。
年齢は15歳くらいである。
「おっ、今日は大勢だね。コウタ坊」
「ああ。今回は武具を一新しようと思っていてな。全員で来た」
前回来たときは、エメラダの武具を製作するときだったか。
俺とエメラダ、いつも俺に付いてくるシルヴィ、そしてミナを紹介するためにミナ。
その4人だけで来ていた。
「全員って言うと……10人か? この人数だと結構大変だよ。時間も掛かるし、何より費用が……」
「人手は大丈夫だ。ミナに手伝ってもらう。そうだろ? ミナ」
「はいなのです。むしろ、ボクがメインで作るのですよ」
俺の言葉に、ミナがやる気を見せる。
「ミナが? お前は鍛冶のブランクが……。いや、ジョブレベルが上がっているなら、ブランクで衰えた分を差し引いても、前よりは上達しているのか?」
「はいなのです。ボクの今のジョブは『聖鍛冶師』。かなりの武具を作れると思うのですよ」
「な、なにぃっ!? ミナが『聖鍛冶師』だとぉっ!?」
ミナが言ったジョブに、ミルキーが驚く。
『聖鍛冶師』は『鍛冶師』の上級ジョブだ。
極端に珍しいジョブではないはずだが、それでもまだ10代のミナが持っているというのは驚きなのだろう。
「い、いつの間にそんなジョブレベルを上げたんだ?」
「ミルキーさんも知っている通り、コウタくんといっしょに冒険者としてあちこち回っていたのですよ」
「だが、それにしたってよ……」
ミルキーは納得していない様子だ。
まあ、それはそうだろう。
『鍛冶師』のような生産系のジョブレベルを上げる方法は、主に2種類ある。
1つは、真っ当に生産行為を行うこと。
そしてもう1つは、魔物を狩ったりダンジョンを攻略したりして、魔力を吸収していくことだ。
前者がコツコツとレベルを上げる方法であるのに比べ、後者は一気にレベルが上がる可能性がある。
しかし、それにも限度というものがある。
冒険者について回っただけで短期間の内に上級ジョブの獲得に至ったと言われて、すぐに納得できるものではない。
「ミルキーさん、ひょっとして知らないのです? コウタくん、それにボクたち『悠久の風』の偉業を」
「へ? 知らねぇな。何かしたのか? そういや、ちょっと前に何か町が騒がしかったような……。それに関係しているのか?」
ミルキーが首を傾げる。
以前から思っていたのだが、彼女は職人タイプだな。
ショートカットの髪はボサボサだし、服装も適当だ。
肌にはあちこちに油汚れのようなものが付いている。
その上、俗世の出来事にも疎いらしい。
ふふふ。
俺たち『悠久の風』の活躍をドヤ顔で伝えさせてもらうことにしようか。
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