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第5章

362話 バルドゥール王国第17代国王

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 広場に到着すると、そこは大勢の人々で賑わっていた。
 俺たちが姿を見せると、ざわめきが起こる。

「おい、あれが例の『悠久の風』のメンバーなのか?」

「ああ。間違いないぜ。ほら、あの黒髪の男だろ?」

「なんて禍々しい魔力だ。これが迷宮踏破者の力か」

「いや、それよりも、一緒にいる少女たちの方がヤバいだろ」

「とんでもない美少女ね」

「噂じゃ、少しでもスキを見せた女は食われちまうらしいぜ。きっとあの子たちも……」

「年頃の女は近づくな。すぐにでも孕まされるぞ」

「うぉおお! 俺もあんな女の子と一緒に冒険してえ!」

 そんな声が聞こえる。
 一部でなんか変な勘違いをされているような気がしないでもない。
 まあいいか……。
 俺はそう思ってスルーすることにした。

 俺たちが案内されたのは広場の中央部。
 普段は一般に開放されている場所だ。
 しかし、今は厳粛な雰囲気が漂っている。
 赤い絨毯が敷かれており、その先に玉座があった。
 そこに一人の初老の男性が座っている。
 おそらく彼が国王陛下なのだろう。

「ナディア・エルカインド。参りましてございます」

 俺を先導していた女騎士ナディアが一歩引き、膝をつく。
 それに合わせて俺たちも跪く。
 俺が先頭、他の悠久の風の面々が続き、ナディアがその後ろに控えている形だ。
 群衆たちは息を呑み、遠巻きに様子を見ている。

「皆の者。面を上げよ」

 国王陛下と思われる人物がそう言った。

「はっ」

 俺たちは顔を上げる。

「其方がコウタ殿であるな。余はバルドゥール王国第17代国王、ウルゴ・バルドゥールである。此度のエルカ迷宮討伐、大義であった」

 やはり、俺が迷宮を討伐した件の話で間違いないようだ。
 情報が伝わるの、速くね?

 俺たちはダンジョンコアを破壊した後に、隠し部屋の金銀財宝を回収した上で、一晩休んだ。
 転移魔法を持たない俺たちは、その後エルカ迷宮とエルカ草原を徒歩で移動した。
 転移魔法の使い手がいれば楽だったのだが、ないものはないのだ。
 仕方がない。

 今の時刻は昼過ぎぐらい。
 ダンジョンコアを破壊して、1日が経つか経たないかといったぐらいだ。
 どういう経路で情報が伝わっていったのだろうか。

 それに、情報が伝わるだけならまだしも、国王がこれほど迅速に動くとは。
 何らかの形で社会的名声は高まると思っていたが……。
 これはさすがに予想外だ。

「はっ。迷宮の討伐は、冒険者の務めであります。それが果たせたことは、大変光栄に存じ上げます」

「ふむ。謙虚なのだな。迷宮踏破者ともなれば、時に一国を揺るがすほどの戦闘能力を持つものだが……」

「恐れながら陛下。私はまだまだ修行中の身。迷宮を踏破できたのは、仲間たちの助力あってのことです」

「ほう。それほどの実力を持ちながらも、更なる向上心を持っていると申すか。ますます気に入った」

 ウルゴ陛下が満足げな笑みを浮かべる。
 どうやら気に入ってくれたようだ。
 第一関門は突破といったところか。
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