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第5章
335話 強制転移のトラップがあった部屋
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「おっ! あそこの部屋には見覚えがあるな」
「わたしたちが強制転移のトラップに引っ掛かった部屋ですね」
「やっと戻ってきたんだね……」
俺の言葉に、シルヴィとユヅキが反応した。
「これでようやく安心できるのです」
「やったぜ!!」
ミナとリンが嬉しそうに声を上げる。
「この部屋ですか……。改めて見れば、少し禍々しい雰囲気がしますわね」
「……そうだね。この空気を覚えておけば、次は引っ掛からないかも……」
ローズとティータがそんな感想を述べた。
「ふうむ。確かに、若干だが普通の部屋とは雰囲気が異なるな。うまく言語化できないが……」
俺はその部屋に入り、中を改めて観察する。
MSCでも、強制転移のトラップはあった。
コツさえ掴めれば『盗賊』などのジョブがない者でも、トラップを感知することができる。
だが、これがなかなか難しい。
俺でさえ、相当に集中しないと見抜けない。
『盗賊』のジョブを取得して鍛えてもいいのだが、その取得条件がなあ。
ガチで窃盗をしなければ取得できない。
八百長とか、身内同士での窃盗では条件を満たさない。
リスクが大きい。
『盗賊』のジョブを取得するためにガチの窃盗をして捕まってしまうリスクを犯すか、『盗賊』のジョブをグレイス1人に任せきりにしたまま今後の活動を続けるリスクを犯すか。
非常に判断に困るところだ。
しかし、一応は検討の余地があるか。
「……えっと。入っても大丈夫なのですか?」
「見たところ、トラップの再起動の準備中のようだぜ。今は大丈夫だ」
心配げなエメラダに、グレイスが答える。
「そうだな。やはりこのトラップのクールタイムは相当に長いようだ。あと10年以上は再発動しないだろう」
そのあたりは、意思を持つ迷宮のバランス感覚次第だ。
トラップを一切設置しなければ、迷宮内で死亡する冒険者が少なくなり、迷宮は飢えてしまう。
かといって即死級や迷宮深部への強制転移などのトラップを高頻度で連発していては、危険な迷宮として優先的に攻略されダンジョンコアを破壊されてしまう。
長生きする迷宮は、バランス調整がうまいのだ。
「……おや? グレイス、ちょっとここを見てくれ」
「ん? 何だ、コウタ親分」
「ここに何か書いてないか?」
俺は壁の一部に何か文字が書かれていることに気付いた。
「これは……迷宮語だな。どうやらこの部屋の隠された役割について書かれているらしい」
「へぇ。さすがはグレイスだ」
「ま、ジョブの補正があるからな」
グレイスは嬉しそうに胸を張る。
そして、その内容を読み上げ始めたのだった。
「わたしたちが強制転移のトラップに引っ掛かった部屋ですね」
「やっと戻ってきたんだね……」
俺の言葉に、シルヴィとユヅキが反応した。
「これでようやく安心できるのです」
「やったぜ!!」
ミナとリンが嬉しそうに声を上げる。
「この部屋ですか……。改めて見れば、少し禍々しい雰囲気がしますわね」
「……そうだね。この空気を覚えておけば、次は引っ掛からないかも……」
ローズとティータがそんな感想を述べた。
「ふうむ。確かに、若干だが普通の部屋とは雰囲気が異なるな。うまく言語化できないが……」
俺はその部屋に入り、中を改めて観察する。
MSCでも、強制転移のトラップはあった。
コツさえ掴めれば『盗賊』などのジョブがない者でも、トラップを感知することができる。
だが、これがなかなか難しい。
俺でさえ、相当に集中しないと見抜けない。
『盗賊』のジョブを取得して鍛えてもいいのだが、その取得条件がなあ。
ガチで窃盗をしなければ取得できない。
八百長とか、身内同士での窃盗では条件を満たさない。
リスクが大きい。
『盗賊』のジョブを取得するためにガチの窃盗をして捕まってしまうリスクを犯すか、『盗賊』のジョブをグレイス1人に任せきりにしたまま今後の活動を続けるリスクを犯すか。
非常に判断に困るところだ。
しかし、一応は検討の余地があるか。
「……えっと。入っても大丈夫なのですか?」
「見たところ、トラップの再起動の準備中のようだぜ。今は大丈夫だ」
心配げなエメラダに、グレイスが答える。
「そうだな。やはりこのトラップのクールタイムは相当に長いようだ。あと10年以上は再発動しないだろう」
そのあたりは、意思を持つ迷宮のバランス感覚次第だ。
トラップを一切設置しなければ、迷宮内で死亡する冒険者が少なくなり、迷宮は飢えてしまう。
かといって即死級や迷宮深部への強制転移などのトラップを高頻度で連発していては、危険な迷宮として優先的に攻略されダンジョンコアを破壊されてしまう。
長生きする迷宮は、バランス調整がうまいのだ。
「……おや? グレイス、ちょっとここを見てくれ」
「ん? 何だ、コウタ親分」
「ここに何か書いてないか?」
俺は壁の一部に何か文字が書かれていることに気付いた。
「これは……迷宮語だな。どうやらこの部屋の隠された役割について書かれているらしい」
「へぇ。さすがはグレイスだ」
「ま、ジョブの補正があるからな」
グレイスは嬉しそうに胸を張る。
そして、その内容を読み上げ始めたのだった。
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