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第5章

330話 口移し再び

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 行き倒れていたセリアを発見した俺。
 とりあえず彼女を介抱することにした。

「さあ、セリア。まずは目を閉じてくれ」

「こ、こうですかにゃ?」

 言われた通りに目を閉じるセリア。
 素直な性格だ。

「ああ。そのままゆっくりと口を開けるんだ」

「こ、こんな感じですかにゃ……?」

「よし。じゃあ次は、口を開けたままの状態で舌を出してみて」

「えっと……。こ、これでいいですにゃ?」

「ああ。上出来だ」

 俺はそう声を掛けながら、ストレージから取り出した水を自分の口に含む。
 そして……。

「んむっ!?」

 セリアが驚いて声を上げる。
 俺は彼女の口に自分の唇を重ねたのだ。
 そして、舌を絡ませながら水を流し込んでいく。

「んぐ……ごく……こく……」

 セリアは目を開いて一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに水を飲み込み始めた。

「ん……くちゅ……れろ……」

 俺はセリアの口から水がこぼれないように注意しつつ、さらに水を送り続ける。
 しばらく経って、セリアは水をすべて飲み込んだようだ。

「ぷはっ!」

 セリアは息苦しくなったのか、大きく呼吸をする。

「な、何をするんだにゃ! ビックリしたじゃないかにゃ!!」

 セリアは顔を赤くしながら抗議する。

「まあまあ、落ち着け。今のはキスではない。ただ、俺の魔力を込めた水をセリアに飲ませたかっただけなんだ」

「にゃんと!? そ、そういうことは先に言って欲しいのですにゃ!! てっきり、コウタさんに食べられてしまうのかと思ったのですにゃ……」

「食べるわけないだろう……。だが、おかげで回復したみたいだな」

「ほ、本当ですにゃ……。あんなに干乾びていた身体が、今は信じられないほど潤っているのですにゃ……」

 セリアは両手をグーパーさせて、元気になったことを確認している。

「よかった。窮地は脱したということだな」

「はいですにゃ! ありがとうございますですにゃ。本当に助かりましたにゃ」

「いや、礼には及ばない。それより、立てるか?」

「はいなのですにゃ。もう大丈夫ですにゃ」

 そう言いつつ、セリアが立ち上がろうとする。
 しかし、その動きはフラついており、今にも倒れそうだ。

「おっと……」

 俺が慌てて支えると、彼女は俺の腕の中にすっぽりと収まった。

「あぅ……。す、すみませんですにゃ。まだ少し足元がおぼつかないようですにゃ……」

「無理もないさ。かなり衰弱していたしな」

 つい先ほどまで、迷宮で倒れ込んでいたぐらいだからな。
 魔力を込めた水を口移しで飲ませただけでは、全快とまではいかなかったか。

「よし、俺に名案がある」

「ふぇ? 名案ですかにゃ?」

「ああ。また俺の指示に従ってもらおうか」

 これをすれば、今度こそ彼女は全快となるだろう。

「はいですにゃ……」

 セリアは不安そうな顔をしながら、コクリとうなずいたのだった。
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