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第5章

283話 エメラダの武器の新調

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 エメラダの一件から数日が経過した。
 彼女は、俺と一緒に依頼を受けたり、魔物狩りを行ったりしている。
 『エメラダの工房』についても、みんなと共に片付けをして、元通りになった。
 数日に一度程度の頻度で営業を再開する予定だ。

 彼女は俺の奴隷である。
 とはいえ、別に鎖で繋がれているわけではないし、俺と普通に接している。
 普通の服に着替えさせれば、そこらの町娘にしか見えない。

「……えっと。今回の依頼も無事に終わりましたね」

 帰り道、エメラダが話しかけてきた。

「そうだな。エメラダのジョブレベルも上がってきていているぞ」

「はい。あの、主様。あたしなんかのために、本当にありがとうございます」

 エメラダは、俺のことを「主様」と呼ぶ。
 奴隷として購入した以上、その呼び方は間違っていないのだが、ちょっとくすぐったい気持ちになる。
 最初にそう呼ぶように強要したのは俺だが。

「いや、気にすることはない。俺も、エメラダの力が必要だからな」

「そう言ってもらえると嬉しいです。主様には、感謝してもしきれません。この恩は頑張ってお返し致します」

「ああ、期待してるよ」

 そんな話をしながら、俺たち『悠久の風』は街への道を歩く。

「へへっ。ところでよ。エメラダっちの武器は短剣のままなのか?」

 隣を歩いていたリンが、唐突に言った。

「ああ。とりあえずはな」

「それなら、もう少しいい武器を買ってもいいんじゃないかな? 今使っているのは、コウタが元々持っていたお古でしょ?」

「優れた武器があれば、いざという時にも安心ですわ」

 ユヅキとローズも会話に加わってくる。
 確かに、そろそろいいかもな。

「そうだな。じゃあ、装備を新調するか」

「ボクの鍛冶屋で買うのはどうなのです? 今は店を任せているけど、所有者はボクなのです。割引価格で販売してもらうのです」

「おっ。それはありがたい」

 ミナはこの町に鍛冶場を持っている。
 今は、知り合いに店を任せていると言っていた。

「ミナさんのお知り合いなら安心ですね! ええっと、確か従姉妹さんなのでしたか?」

 シルヴィがそう問う。

「そうなのです。腕は確かで、安定した品質の武器を作ってくれているのです」

 店を守っているのは、ミナの従姉妹か。
 料亭ハーゼも、店を任されているのはリンの従姉妹だった。
 ミナとリンは元々ここを拠点に生活していたわけだし、近親者がこの町に居てもおかしいわけではないな。

「期待できそうだ。さっそく明日行くことにしようか」

 俺はそう提案する。
 こうして、俺たちはエメラダの武器を新調することになったのだった。
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