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第5章

260話 薬草採取

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 エルカ樹海に到着した俺たち『悠久の風』は、早速採集を始めた。
 Bランクパーティとして確かな実力を持つ俺たちではあるが、採取の依頼を受けることは少しめずらしい。

「薬草か。俺に任せてくれ。採取した経験がある」

 グレイスが張り切って進み出る。

「へへっ。あたいも、山菜集めは慣れてるぜ!」

 リンがそう言った。

「……ティータも頑張る……」

「もちろんわたしも精一杯取り組みます!」

 ティータとシルヴィはやる気十分といった様子だ。
 ユヅキ、ミナ、ローズも交え、8人で手分けして探すことにした。

「この辺りは、比較的見つけやすい場所みたいですね」

 シルヴィが周囲をキョロキョロと見回しながら言う。

「ああ。分かりやすい場所だな」

 俺はMSCの経験を思い出しながら答える。
 薬草採取は駆け出し冒険者にとって鉄板の依頼だ。
 ゲームで何度も行った経験がある。
 MSCとこの世界は異なる点も多いのだが、類似している点も多い。

「僕も何度か経験があるよ。『大地の轟き』のみんなといっしょに」

 ユヅキは冒険者として俺よりも先輩だ。
 当然、こういう依頼を受けたことがあるのだろう。

「ボクはないのです。こういうチマチマした作業は苦手なのです」

「わたくしも、汚れる仕事はあまり経験がありませんわ」

 ミナとローズは、あまりこういった依頼が得意ではないようだ。

「まあ、地道にやっていこう。この人数ならすぐに終わるさ」

 俺はみんなに声をかけながら、手頃な薬草を探していく。

「おっ! 少し珍しい薬草があったぞ!」

 グレイスが声を上げた。
 彼が指差している先には、白い花が咲いている。

「本当だ! よく見つけたな。ホワイトフラワーだ」

 ハイポーションの材料となる薬草だ。
 俺は感心しつつ、その草に手を伸ばす。
 だが……。

「ちょっと待ったぁー!!」

 突如、大声で叫んだ人物がいた。

「ん? なんだ?」

 俺は思わず振り返る。
 そこには、武装した男たちの姿が見えた。
 人数は10人ほどだろうか。

「おい! そいつをこっちに渡せ」

 先頭にいた男が言う。

「これはうちのパーティのものだ。あんたらに渡す理由がないな」

 俺はそう言い返す。

「黙れ! そのホワイトフラワーは、俺たちが目を付けていたやつだ。お前みたいな新参者が勝手に摘み取るんじゃねぇ」

「ふん。森に生えている薬草は、早い者勝ちだろ?」

「うるさい! とにかく寄越すんだ!!」

 やれやれ……。
 マナーの悪い奴らだ。
 私有地内で栽培している薬草ならばともかく、森の中に生えている薬草は見つけて採取した者に所有権がある。
 ここは、実力行使で分からせてやるとするか。
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