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第5章

257話 料亭ハーゼへ

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 宿屋の一室で休憩しているところだ。

「さて。一服したら、食事だな。料亭ハーゼに行こうか」

「おう! 楽しみにしてな」

 リンが笑顔で言う。

「ボクはお腹ペコペコなのです。肉を食べたいのです」

「俺もだ。早く食べにいこう」

 ミナとグレイスが言った。
 少しして俺たちは宿屋を出て、料亭ハーゼへと向かう。

「ここだ」

 リンは店の戸を開ける。

「いらっしゃいませぇ」

 店員の女性が声をかけてきた。

「よう、ちゃんとやってるみたいだな」

「あっ。店長、お戻りになられたのですねぇ」

 料亭ハーゼはリンの店だ。
 彼女が『悠久の風』に加入して町を離れるにあたり、人を雇って経営を任せていた。
 もちろん丸投げではなく、一定期間の研修も行っていたそうだ。

「ああ。それで、調子はどうだ?」

「えへへ。おかげさまで繁盛してますよぉ。今日のピークは過ぎましたけどぉ」

 リンの問いに対し、女性店員は嬉しそうに言う。
 確かに、今の時間は夕食にはやや遅い。
 その割には、チラホラと客が入っているので、それなりぬ繁盛していると言っていいだろう。

「それは良かった。じゃあ、あたいらは個室を使わせて貰うぜ」

「はいぃ。どうぞぉ」

 リンが俺たちを連れて店の奥へと進む。
 個室に入った俺たちは席に着く。

「さあ、好きなもん頼んでくれ! ここはあたいの奢りだ。あいつの料理の腕も上がってると思うからよ。期待してくれて良いぜ」

 リンはメニュー表を開いてテーブルに置く。
 『悠久の風』の稼ぎは、半分ほどをパーティの共有活動資金として運用している。
 残りの半分を、パーティメンバーでほぼ均等に配分している。
 普段の食費はパーティ資金から出すのだが、何かの祝いの席などでは例外もある。
 料亭ハーゼでの食事は、リンが奢ってくれるそうだ。

「ありがとうございます! では、遠慮なく……。これとこれを頼みましょう!」

「ボクも賛成なのです」

 シルヴィが指差したのは、両方とも肉料理だった。
 ミナがそれに同意する。

「僕はサラダも食べたいかな」

「……ティータもそうするよ……」

 ユヅキとティータは、野菜をふんだんに使ったサラダを注文した。

「わたくしはこれでお願いしますわ」

 ローズは魚を中心としたコースを頼む。

「おいおい……。そんなにたくさん、食べられるのかよ? なあ? コウタ親分」

 グレイスは俺を見て言った。

「まあ、残っても明日に持ち越せばいいだけだしな。問題ないだろう」

 俺はそう答える。
 そして、女性店員を呼び注文を済ませたのだった。
 どれほどおいしい料理がくるか、楽しみなところだ。
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