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第4章 エルフの里アルフヘイム

223話 もう斬った

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 俺の【アクセル】により侵略者たちを一網打尽にした。
 だが、黒狼団の頭目カイゼルだけはギリギリ生き残り、さらにはエリクサーで全回復した。

「ふう。スッキリしたぜ。日々の疲れやちょっとした傷も治ったぜ」

 カイゼルはすっかり回復した自分の体を見て言った。

「さあ、やろうぜ。第二ラウンドだ」

「…………」

 俺は黙ってカイゼルを見つめた。
 こいつは何を言っているんだ?

「おい! 何をぼけっとしてる! 早く来いよ!」

「やれやれ……。気付いていないのか。哀れな奴だな……」

「ああん? なにがだよ?」

 カイゼルが疑問を口にする。

「もう斬った」

「は?」

 次の瞬間、俺の剣によって体の腱を切り裂かれたカイゼルが倒れ込んだ。
 致命傷ではないが、もはやまともに動けないだろう。
 這いずって逃げる程度ならまだしも、戦闘は不可能だ。

「な、なん……で……」

 カイゼルの顔には驚愕の表情が張り付いていた。
 俺が再度発動した【アクセル】による攻撃を知覚できなかったらしい。

「お、俺たちは……最強の……」

「最強とは言っても、所詮は無法者の中での話だろう? 真の強者は、己の力を誇示しないものだ」

 俺はカイゼルの言葉を遮ると、ゆっくりと歩いて近寄っていった。

「ひいっ!」

 カイゼルが恐怖のあまり後ずさりする。
 しかし、俺は容赦なく長剣を振り下ろした。

「ぐわあぁっ!」

 カイゼルが悲鳴を上げる。
 まだ死んでいない。
 結構力を入れて斬ったのに、タフだな。

 だが、ここまで来れば頑丈なだけではどうにもならない。
 死に至るまで斬ればいいだけだ。
 這いずって逃げるカイゼルに追いつき、俺は再び剣を振り上げる。

「ま、待て! 俺は心を入れ替える! だから命だけ助けてくれ!!」

 カイゼルはそう叫ぶと、地面に頭をこすりつけて土下座をした。
 俺から逃げ切れないと判断したのだろう。
 プライドの欠片も感じられない哀願である。

「ダメだ。盗賊団のリーダーを見逃せるわけがない」

 俺は最後のトドメとばかりに、大量の闘気を込めた剣を振り上げる。
 そのときだった。

「待った! カイゼル親分を殺さないでくれっ!!」

 一人の少女が飛び出してきたのである。

「グレイスか。どうして戻ってきた?」

 彼女は、シルヴィやユヅキたちと共に撤退したはずである。
 俺の【アクセル】に巻き込まれたらヤバいからな。
 今はもう戦闘がひと段落したので、問題ないと言えば問題ないのだが。

「カイゼル親分が心配で戻ってきたんだ」

「……何? それは聞き捨てならんな。グレイス、お前は誰の女になったのか忘れたのか?」

 彼女は既に俺の女だ。
 激しい尋問と拷問の末、そう誓わせたのである。

「だ、だけどよ……。カイゼル親分は俺の親みたいな存在だし、恋人のみたいな存在でもあるんだ……」

 グレイスがそう言う。
 黒狼団のメンバーはほとんどが男だ。
 そんな中にいる数少ない女は、当然リーダーや幹部クラスの男たちに可愛がられることになる。
 グレイスはその中でも特別な存在らしい。

「おお……。その通りだグレイス。育ててやった恩を返せ。その男を殺し、俺を助けるんだ!」

 カイゼルが歓喜の声を上げた。
 ちっ。
 面倒な展開になってきたな。

 問答無用でカイゼルを殺すか。
 それとも……。
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