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第4章 エルフの里アルフヘイム

222話 カイゼルの奥の手

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 俺はカイゼル、黒狼団メンバー、ゴブリンたちの波状攻撃を受けた。
 だが、上級ジョブである『英雄』の超スキル【アクセル】の前では、大した攻撃ではない。

 俺は奴らの攻撃を軽く回避し、反撃した。
 そして、【アクセル】状態を解く。

 このスキルは超強力なのだが、闘気と魔力を大量に消耗する。
 あまり長時間は使えないのだ。
 しかし、この一瞬の発動でも今の相手には十分である。

「がっ!!」

「「「ぎゃあああぁっ!!」」」

「「「ギイイイィッ!!」」」

 カイゼルたちは俺の攻撃を受けて、次々と倒れていった。
 さらには、周辺の木々にも甚大な被害が出ている。

 これが【アクセル】の怖いところなんだよな。
 加速状態で繰り出した攻撃は、何気ない攻撃にも必殺級の破壊力がある。
 MSCでは、よくパーティメンバーを巻き込んで殺してしまっていた。

 純粋なゲームならプレイヤーキルのペナルティと実際の有用性を天秤にかけて使えばいい。
 だが、ここは現実味のある世界だ。
 ひょっとしたらゲームの世界なのかもしれないが、それはそれとして感覚的には現実味がある。
 万が一にも仲間を巻き込むわけにはいかない。

 だからこそ、シルヴィやユヅキたちには避難してもらったのだ。
 事前に『英雄』のスキルを共有しておいてよかった。

「よし。これで一網打尽かな」

 黒狼団の連中もゴブリンも、もう動ける者はいなかった。
 ……ん?
 いや、待て。

「ぐぐぐ……。そう簡単にやられてたまるか!」

 カイゼルがそう言って立ち上がる。
 さすがは盗賊団の親分だけあって、しぶとい。

「はあ、はあ……くそっ。なんて強さだ」

 しかし、彼が満身創痍なのは間違いなかった。
 【アクセル】で加速した状態の俺の攻撃を受けて無事なわけがないのだ。
 黒狼団の他のメンバーやゴブリンたちへと攻撃が分散された分、かろうじて立ち上がれる程度の元気が残っているだけである。

 それに、俺の攻撃は相当に手加減していたからな。
 別にカイゼルの命を大切にしたのではなく、周囲の地形や自然への配慮だ。

「ふん。まだやるのか? 無駄なことを」

「うるせえ! まだ終わってねえんだよ!」

 カイゼルが叫び、懐から何かを取り出す。

「これは本当に最後の切り札だ。ザードの野郎に借りを作るのは気に入れねえが、この際仕方ねえ」

 それは小さな瓶のようなものだった。

「なんだそれ?」

「へっ、冥途の土産に教えてやろう。こいつは『エリクサー』だ」

「『エリクサー』だと!?」

 あらゆる傷や病を癒す奇跡の力を持ったポーションの一種だ。
 非常に貴重なもので、市場にはほとんど出回らない。

「これを飲めば、俺はまた戦えるようになる」

 カイゼルはそう言うと、その薬を飲み干した。

「うおおぉー!!」

 カイゼルの身体が光り輝き、みるみると回復していく。

「ああ、もったいねえ……」

 その光景を見た俺は思わず呟いた。
 『エリクサー』は滅多に手に入らない貴重品なのだ。
 それをこんな盗賊ごときの治療ために消費するとは……。
 どうせ回復したところで、俺に勝てるはずもないのに。
 瞬殺して思い知らせてやるとするか。
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