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第4章 エルフの里アルフヘイム

215話 黒狼団を裏切ってもらいたい

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 シルヴィやユヅキのおかげで、グレイスからさらなる情報を得ることができた。
 もう用済みだ。
 適切に処分するために、シルヴィとミナが詠唱を始める。

「ひ……。いやぁ……」

 グレイスは怯えて逃げようとするが、ここは地下牢であり逃げ場などない。
 そうこうしている間にも、シルヴィとミナの詠唱は進んでいる。

 攻撃魔法は、魔力の含有量が少ない物に対しては高威力を発揮する。
 しかし、魔物や人間などに対して使用する場合には、その対象が持つ魔力量に応じて威力が減衰されてしまう。
 グレイスが万全の状態ならば、一発や二発の攻撃魔法では致死級のダメージは与えられないだろう。

 ただ、今は違う。
 彼女には散々尋問された後であり、体力が消耗しきっている。
 そこにシルヴィとミナの二人による連続攻撃をまともに食らえば、命を落とす可能性だってあるだろう。

「い、嫌ぁああっ! 死にたくないぃいっ!」

 彼女は泣き叫びつつ、必死に逃げようとする。
 だが、もちろん逃げ場はない。

「あ…………」

 彼女が自らの死を悟ったような声を上げた瞬間。
 ブッシャァアアッという音とともに、彼女の秘所から大量の尿が吹き出した。

「あ……ああっ……」

 グレイスが呆然とした表情を浮かべる。
 恐怖のあまり、漏らしたか。
 悪巧みをしていた者とはいえ、こうなると哀れなものだな。

「シルヴィ、ミナ。魔法の詠唱を中断してくれ」

「はい!」

「わかったのです」

 俺の指示で、シルヴィとミナは魔法を解除する。
 グレイスがガクリと膝をつく。
 俺はそんな彼女に近づくと、肩に手を置いた。

「ひいいいいっ!」

 グレイスが怯えた声を上げる。

「安心しろ。お前を始末するのは簡単だが、それはしない。やってほしいことがあるからな」

「ほ、本当か?」

 グレイスの表情が明るくなった。
 自分が助かったと思っているらしい。

「ああ。俺たちに協力してほしいんだ」

「お、俺にできることなら何でもする! だから、殺さないでくれ!」

 グレイスが叫ぶ。
 さっきまでとは態度が百八十度変わったな。
 やはり、一度脅しておけば従順になる。
 利用できるものは、なんでも利用しよう。

「まず、お前には、黒狼団を裏切ってもらいたい」

 黒狼団とは、彼女が所属する盗賊団の名前である。

「なんだと?」

「俺たちはこれから、黒狼団を迎え撃つ。そして、壊滅させるつもりだ」

 俺は続ける。

「より確実に壊滅させるために、お前の力を貸してほしい」

「お、俺に黒狼団のみんなを裏切り、お前たちの味方になれと言うのか?」

 グレイスは困惑の表情を見せる。
 そりゃそうだよな。
 いきなりこんなことを言われても困るか。

「そうだ。そうすればお前の命だけは保証してやる」

 この世界において、弱肉強食こそが真理である。
 弱者であるグレイスは従うしかない。

 俺たち『悠久の風』やエルフの戦力だけでも迎え撃つことはできるが……。
 グレイスの協力があれば、さらに戦いを優位に運べる可能性がある。
 できれば味方に引き込んでおきたいところだ。
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