上 下
207 / 1,251
第4章 エルフの里アルフヘイム

207話 カイゼル親分なんて人は知らない!

しおりを挟む
 森の中で行き倒れていたグレイを介抱した。
 そして、彼を連れてアルフヘイムに戻ってきた。

「おお……。ここが親分の言っていた……」

 グレイが感嘆の声を上げる。

「この場所さえ分かれば、後は……」

「どうした?」

「いや、何でもない」

 彼は首を横に振る。

「そうか」

 気になる反応ではあるが、今は置いておくことにしよう。
 まずは、彼を里の者に紹介するのが先だ。

 俺たちは里の入り口へ歩いていく。
 すると、入り口には一人のエルフがいた。
 ヤナハだ。

「……ただいま……」

「お帰りなさいませ、ティータ様。それにコウタ殿も」

 ヤナハは丁寧に頭を下げる。

「そちらの方は?」

「森で倒れていたから助けた。魔力酔いみたいだから、多分里で休ませた方がいいと思って連れてきた」

 俺が事情を説明すると、彼女は少し驚いた顔をする。

「森に? ……それは大変でしたね」

「ああ」

「すぐに中に入れてあげてください。長老たちも許可するでしょう」

「ありがとう。助かるよ」

 これで一安心だな。

「では、私は仕事に戻りますので」

 ヤナハはそう言って去っていく。

「さぁ、行こうか」

 俺はみんなを先導して歩く。
 しばらく歩いたところで、ふと気づく。

「あれ? グレイはどこに行った?」

 先ほどまで後ろにいたはずだが。

「ご主人様。あそこです」

 シルヴィが指をさす。
 見ると、彼は一人でこそこそしている。

「なるほど……。あそこがああなって……。この情報を親分に伝えれば、殴られずに済む……」

 彼がボソボソと何かをつぶやく。
 まるで、里内部の位置関係を探っているかの様子だ。
 俺は彼に近づく。

「おい。何をやってるんだ?」

「い、いや。別に……」

 歯切れが悪い。
 何かを隠しているようにも見える。

「俺たちはあくまで招き入れてもらった身だ。あまり勝手な行動はするな」

「そ、そうだな。すまない」

 素直に謝ってくる。
 まぁ、いいだろう。

「……それより、親分とやらはどこにいる?」

 俺はグレイにそう尋ねる。

「お、親分? 何の話だ?」

 彼がそう答える。
 おかしいな?
 先ほど、確かに『親分』という言葉が聞こえたと思ったのだが。

「いや、さっきお前が言ったじゃないか。ここの地理や内情を探っているようだし。怪しいぞ」

「な、ないない。怪しくなんてないぞ」

「そうなのか?」

「ああ。カイゼル親分なんて人は知らない!」

 グレイがそう断言するが……。

「語るに落ちるとはまさにこのことですね……」

 シルヴィがため息をつく。

「その通りだ。俺たちは『カイゼル』なんて名前を出していないぞ」

「しまった! くっ……。こうなったら……」

 グレイが口をつぐみ、逃亡を図ろうとする。
 しかし、もう遅い。

「逃さないぜ!」

 リンが彼の足を払う。

「捕まえたなのです!」

 ミナがグレイを拘束する。
 ユヅキもそれを手伝っている。

「うわ! 離せぇええ!!」

 グレイは抵抗するが、ミナの怪力に敵うはずもない。
 そのままずるずる引きずられていく。

 「ご主人様。どうします?」

 シルヴィが尋ねてくる。

「そうだな……。何を企んでいるのか吐いてもらおうか」

 森で倒れていたときは、本当に体調が悪そうだったが。
 その後に悪意でも芽生えたのだろうか?
 それとも、そもそも森をうろついていた理由がアルフヘイム関係なのか?

 やはり油断はできない。
 どこに悪人が潜んでいるか分からないものだ。
 俺はグレイの尋問を始めることにしたのだった。
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。 今年で33歳の社畜でございます 俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう 汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。 すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。 そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな

チュートリアル場所でLv9999になっちゃいました。

ss
ファンタジー
これは、ひょんなことから異世界へと飛ばされた青年の物語である。 高校三年生の竹林 健(たけばやし たける)を含めた地球人100名がなんらかの力により異世界で過ごすことを要求される。 そんな中、安全地帯と呼ばれている最初のリスポーン地点の「チュートリアル場所」で主人公 健はあるスキルによりレベルがMAXまで到達した。 そして、チュートリアル場所で出会った一人の青年 相斗と一緒に異世界へと身を乗り出す。 弱体した異世界を救うために二人は立ち上がる。 ※基本的には毎日7時投稿です。作者は気まぐれなのであくまで目安くらいに思ってください。設定はかなりガバガバしようですので、暖かい目で見てくれたら嬉しいです。 ※コメントはあんまり見れないかもしれません。ランキングが上がっていたら、報告していただいたら嬉しいです。 Hotランキング 1位 ファンタジーランキング 1位 人気ランキング 2位 100000Pt達成!!

処理中です...