198 / 1,331
第4章 エルフの里アルフヘイム
198話 仲間たちだけは見逃してあげてください!
しおりを挟む
エルフの女たちを無力化しようとしているところだ。
ヤナハを盾にしつつ、他の者に迫っていく。
「さて、まずは一人目だ」
俺はそう呟いて拳を握る。
そのときだった。
「待ってください!」
声を上げたのはヤナハである。
彼女は涙を浮かべて俺の方に視線を向ける。
「もう抵抗はしません! だから仲間たちだけは見逃してあげてください!」
「…………」
俺は無言でヤナハに視線を送る。
ピュセルも驚いているようであった。
「ヤナハ……。お前何を……」
「ピュセル姉さん……。私たちではこの男に勝てない。湖を汚されたのは悔しいけど、これ以上同胞が犠牲になるのを見るくらいなら私がここで死んだ方がマシです」
「バカを言うなっ! 死ぬなんて許さないぞっ!」
ピュセルが叫ぶ。
「でも、このままだとみんな殺されますよ?」
「うっ……」
「お願いします。私一人で済むのであればそれで構いませんから」
「ヤナハ……」
ヤナハの言葉を聞いて、ピュセルは苦悶の表情を浮かべた。
「あー。その、なんだ……」
死ぬだの殺すだの、物騒なことを言うものじゃない。
俺は襲われたから抵抗しているだけであって、そこまでする気はないぞ。
この事態をどう収めたものか……。
俺が考えているとき、ある者が口を開いた。
「……みんな落ち着いてよ。コウタはティータの恩人なの……」
ティータだ。
彼女が止めに入った。
「おお……。ティータ殿がなぜここに? それに、この男が恩人だと?」
ピュセルは怪しげなものを見る目で俺を見てきた。
彼女が警戒心を少し下げた。
対話を試みるなら今だ。
「いかにも、俺はティータと懇意にさせてもらっている。お前は何者なんだ?」
「我はエルフの森の長の娘、ピュセルというものだ」
「そうか。俺はコウタだ。Bランク冒険者のドラゴンスレイヤーにして、アイゼンシュタイン子爵家へ婿入りする予定である」
俺は名乗り返す。
信頼を得るためにも、肩書は列挙しておいた方がいいだろう。
「ほう? Bランク冒険者か。先ほどの戦闘能力もうなづけるが……」
「だろ? 俺はいずれAランク、そしてSランクになる男だからな」
「ふん。大した自信ではないか。だが、我が森でも実力が全て。もし、そちたちがティータの恩人でなかったなら、今頃は……」
ピュセルがそう言って槍を構える。
差し違えてでも俺を倒す覚悟だったのかもしれない。
「わかったよ。気をつける。まずは停戦しよう」
俺はそう言う。
そして、掴んでいたヤナハの身を解放する。
「それで? ティータ殿の恩人ということだが、何があったのだ?」
「……それがね……」
ティータがこれまでの経緯を説明していく。
もちろん、エルフの宿敵と呼ばれるブラックワイバーンを討伐した件も含んでいる。
ピュセルやヤナハとの敵対関係は何とか解消できそうだ。
ヤナハを盾にしつつ、他の者に迫っていく。
「さて、まずは一人目だ」
俺はそう呟いて拳を握る。
そのときだった。
「待ってください!」
声を上げたのはヤナハである。
彼女は涙を浮かべて俺の方に視線を向ける。
「もう抵抗はしません! だから仲間たちだけは見逃してあげてください!」
「…………」
俺は無言でヤナハに視線を送る。
ピュセルも驚いているようであった。
「ヤナハ……。お前何を……」
「ピュセル姉さん……。私たちではこの男に勝てない。湖を汚されたのは悔しいけど、これ以上同胞が犠牲になるのを見るくらいなら私がここで死んだ方がマシです」
「バカを言うなっ! 死ぬなんて許さないぞっ!」
ピュセルが叫ぶ。
「でも、このままだとみんな殺されますよ?」
「うっ……」
「お願いします。私一人で済むのであればそれで構いませんから」
「ヤナハ……」
ヤナハの言葉を聞いて、ピュセルは苦悶の表情を浮かべた。
「あー。その、なんだ……」
死ぬだの殺すだの、物騒なことを言うものじゃない。
俺は襲われたから抵抗しているだけであって、そこまでする気はないぞ。
この事態をどう収めたものか……。
俺が考えているとき、ある者が口を開いた。
「……みんな落ち着いてよ。コウタはティータの恩人なの……」
ティータだ。
彼女が止めに入った。
「おお……。ティータ殿がなぜここに? それに、この男が恩人だと?」
ピュセルは怪しげなものを見る目で俺を見てきた。
彼女が警戒心を少し下げた。
対話を試みるなら今だ。
「いかにも、俺はティータと懇意にさせてもらっている。お前は何者なんだ?」
「我はエルフの森の長の娘、ピュセルというものだ」
「そうか。俺はコウタだ。Bランク冒険者のドラゴンスレイヤーにして、アイゼンシュタイン子爵家へ婿入りする予定である」
俺は名乗り返す。
信頼を得るためにも、肩書は列挙しておいた方がいいだろう。
「ほう? Bランク冒険者か。先ほどの戦闘能力もうなづけるが……」
「だろ? 俺はいずれAランク、そしてSランクになる男だからな」
「ふん。大した自信ではないか。だが、我が森でも実力が全て。もし、そちたちがティータの恩人でなかったなら、今頃は……」
ピュセルがそう言って槍を構える。
差し違えてでも俺を倒す覚悟だったのかもしれない。
「わかったよ。気をつける。まずは停戦しよう」
俺はそう言う。
そして、掴んでいたヤナハの身を解放する。
「それで? ティータ殿の恩人ということだが、何があったのだ?」
「……それがね……」
ティータがこれまでの経緯を説明していく。
もちろん、エルフの宿敵と呼ばれるブラックワイバーンを討伐した件も含んでいる。
ピュセルやヤナハとの敵対関係は何とか解消できそうだ。
27
お気に入りに追加
1,097
あなたにおすすめの小説

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
異世界で俺だけレベルが上がらない! だけど努力したら最強になれるらしいです?
澤檸檬
ファンタジー
旧題 努力=結果
異世界の神の勝手によって異世界に転移することになった倉野。
実際に異世界で確認した常識と自分に与えられた能力が全く違うことに少しずつ気付く。
異世界の住人はレベルアップによってステータスが上がっていくようだったが、倉野にだけレベルが存在せず、行動を繰り返すことによってスキルを習得するシステムが採用されていた。
そのスキル習得システムと異世界の常識の差が倉野を最強の人間へと押し上げていく。
だが、倉野はその能力を活かして英雄になろうだとか、悪用しようだとかそういった上昇志向を見せるわけでもなく、第二の人生と割り切ってファンタジーな世界を旅することにした。
最強を隠して異世界を巡る倉野。各地での出会いと別れ、冒険と楽しみ。元居た世界にはない刺激が倉野の第二の人生を彩っていく。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる