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第4章 エルフの里アルフヘイム
187話 エルフの森の奥地へ
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テツザンからアルフヘイムに向けて馬車に揺られること1週間ほど。
エルフの森に入ってもうずいぶん奥の方まで来た。
「ここから先は徒歩になります」
御者の男がそう言うと、馬車は停車した。
ここまで乗せてくれたお礼を言い、馬車を降りることにする。
降りた先に広がっていたのは…………鬱蒼とした木々だ。
その光景を見て、俺は思わず感嘆の声を上げる。
「これはすごいな……」
エルカ樹海もなかなかの森林地帯だったが、ここはそれ以上だ。
視界いっぱいに広がる緑。
頭上を見上げれば、空すら覆い尽くさんばかりの大木が乱立している。
「では、私はこの辺で失礼します」
御者の男はそう言って、馬車を走らせて去っていった。
帰りの足がなくなってしまうが、仕方ない。
森の深くまで馬車で行くことは困難だし、こんな森中で数日以上待っておいてもらうのも現実的ではないからだ。
それよりは、多少不便でも帰りは徒歩でがんばる方が現実的だろう。
俺のストレージには大量の物資が入っているし、ローズはアイテムバッグを持っている。
野垂れ死にの心配は少ない。
どちらかと言えば魔物に警戒する必要があるが、Bランクパーティである『悠久の風』の脅威となるような敵は少ない。
エルフの里までそこそこ近づいているという話だし、そこにたどり着きさえすればとりあえず安心だ。
「それにしても……本当に凄まじいな」
ゲーム時代とはまるで違う。
MSCのグラフィックの美しさは凄かったのだが、これは空気が違うというかなんというか……。
「空気がおいしい気がしますね!」
「こんな凄い森に来るのは、僕は初めてだよ」
シルヴィとユヅキがそんな感想を述べている。
確かに、この澄んだ空気は気持ちいい。
俺はしばらく深呼吸を繰り返す。
「へへっ。いい山菜が取れそうだな。エルフ料理を教えてもらうのが楽しみだぜっ!」
「ボクも、エルフの武器や防具には興味があるのです。火はあまり使わないそうなのですが、果たしてどんな技術があるのか……」
リンとミナは早くも里への期待に胸を膨らませているようだ。
こんな機会でもなければ行くこともないだろうし、せいぜい楽しもう。
「わたくしも、実際に行くのは初めてですわね。ティータ殿から話はたくさん聞いておりましたが……」
ローズも少し嬉しそうだ。
やはり、聞くだけではなくて実際に行く方が楽しい。
「……ん。自然がいっぱいでいいところ。里を上げて歓迎する。みんなを連れていくことは言っていないけど、ブラックワイバーンを倒した功労者を無下にすることはないはず……」
ティータがそう言う。
「あれ? 俺たちが行くことを伝えていないのか?」
「……うん。アルフヘイムへの手紙は、3か月に1回しか届かないから……」
なるほど。
それなら、手紙を出しても届くまでに時間がかかってしまう。
直接会いに行った方がいいだろう。
エルフたちの反応を見るのも面白そうだしな。
「いや……。しかしどうだろう? いきなり人族や獣人族が訪れて大丈夫なのだろうか?」
MSCにおいて、エルフはやや排他的な思想を持った種族であった。
別に、多種族を見かけたらすぐに捕らえて吊るすというほどではないが……。
突然訪れてきた他種族の者を里に入れないというぐらいは、普通にありそうな気もする。
「……それは問題ないと思う。前の時は、まずティータが里に入って、それから同行者を紹介した。だから、あなたたちもきっと大丈夫……」
ティータがそう言うのであれば、問題はないか。
まぁ、ダメだったとしても力づくで押し通るだけだが……。
俺はそんなことを考えながら、さらに森の中へと進んでいくのだった。
エルフの森に入ってもうずいぶん奥の方まで来た。
「ここから先は徒歩になります」
御者の男がそう言うと、馬車は停車した。
ここまで乗せてくれたお礼を言い、馬車を降りることにする。
降りた先に広がっていたのは…………鬱蒼とした木々だ。
その光景を見て、俺は思わず感嘆の声を上げる。
「これはすごいな……」
エルカ樹海もなかなかの森林地帯だったが、ここはそれ以上だ。
視界いっぱいに広がる緑。
頭上を見上げれば、空すら覆い尽くさんばかりの大木が乱立している。
「では、私はこの辺で失礼します」
御者の男はそう言って、馬車を走らせて去っていった。
帰りの足がなくなってしまうが、仕方ない。
森の深くまで馬車で行くことは困難だし、こんな森中で数日以上待っておいてもらうのも現実的ではないからだ。
それよりは、多少不便でも帰りは徒歩でがんばる方が現実的だろう。
俺のストレージには大量の物資が入っているし、ローズはアイテムバッグを持っている。
野垂れ死にの心配は少ない。
どちらかと言えば魔物に警戒する必要があるが、Bランクパーティである『悠久の風』の脅威となるような敵は少ない。
エルフの里までそこそこ近づいているという話だし、そこにたどり着きさえすればとりあえず安心だ。
「それにしても……本当に凄まじいな」
ゲーム時代とはまるで違う。
MSCのグラフィックの美しさは凄かったのだが、これは空気が違うというかなんというか……。
「空気がおいしい気がしますね!」
「こんな凄い森に来るのは、僕は初めてだよ」
シルヴィとユヅキがそんな感想を述べている。
確かに、この澄んだ空気は気持ちいい。
俺はしばらく深呼吸を繰り返す。
「へへっ。いい山菜が取れそうだな。エルフ料理を教えてもらうのが楽しみだぜっ!」
「ボクも、エルフの武器や防具には興味があるのです。火はあまり使わないそうなのですが、果たしてどんな技術があるのか……」
リンとミナは早くも里への期待に胸を膨らませているようだ。
こんな機会でもなければ行くこともないだろうし、せいぜい楽しもう。
「わたくしも、実際に行くのは初めてですわね。ティータ殿から話はたくさん聞いておりましたが……」
ローズも少し嬉しそうだ。
やはり、聞くだけではなくて実際に行く方が楽しい。
「……ん。自然がいっぱいでいいところ。里を上げて歓迎する。みんなを連れていくことは言っていないけど、ブラックワイバーンを倒した功労者を無下にすることはないはず……」
ティータがそう言う。
「あれ? 俺たちが行くことを伝えていないのか?」
「……うん。アルフヘイムへの手紙は、3か月に1回しか届かないから……」
なるほど。
それなら、手紙を出しても届くまでに時間がかかってしまう。
直接会いに行った方がいいだろう。
エルフたちの反応を見るのも面白そうだしな。
「いや……。しかしどうだろう? いきなり人族や獣人族が訪れて大丈夫なのだろうか?」
MSCにおいて、エルフはやや排他的な思想を持った種族であった。
別に、多種族を見かけたらすぐに捕らえて吊るすというほどではないが……。
突然訪れてきた他種族の者を里に入れないというぐらいは、普通にありそうな気もする。
「……それは問題ないと思う。前の時は、まずティータが里に入って、それから同行者を紹介した。だから、あなたたちもきっと大丈夫……」
ティータがそう言うのであれば、問題はないか。
まぁ、ダメだったとしても力づくで押し通るだけだが……。
俺はそんなことを考えながら、さらに森の中へと進んでいくのだった。
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