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第3章 武の名地テツザンへ

170話 だが断る

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 その後、俺たちは街に戻った。
 そこで待っていたのは、クラウスを始めとする部隊だった。

「おお、お前たちも無事だったようだな。おかげで私たちは安全に撤退できた。礼を言う」

 彼はそう言いながら頭を下げてきた。
 街に戻って、しっかりと傷を癒やしていたようだな。

「いや、これぐらいはお安い御用だ」

 俺もそう返す。

「うむ、しかしまさかドラゴンと戦うことになるとはな。私も昔、一度だけ戦ったことがあるが、あれは本当に恐ろしい魔物だ。討伐までに相当な被害が出た」

 クラウスは腕組みしながら言う。

「今回もきちんと準備を整えておく必要がある。申し訳ないが、リベンジ戦の際にはまた協力をお願いしたい。もちろん報酬は出す」

「ああ、任せてくれ。……と言いたいところだが」

「うん?」

「だが断る」

「……ん!?」

 一瞬、彼の目が点になった。

「ちょ、ちょっと待て! なぜだ!? なぜ協力してくれない?」

「存在しないドラゴンは倒せない」

「……何だと……? 冗談はやめてくれ」

「いや、冗談ではなく。俺たち『悠久の風』が倒したのだ。脅威となるブラックワイバーンはもう存在しない。ローズとティータも手伝ってくれた。彼女たちが証人だ」

 俺は二人の方を向いた。

「……うん。間違いないよ……」

「そ、そうですわね。まあ、わたくしは治療魔法を掛けただけですが……」

 ティータとローズがそれぞれ証言してくれる。

「そういえば、これも討伐の証拠になるか」

 俺はブラックワイバーンの魔石を取り出した。
 死体はそのままだが、魔石だけは剥ぎ取っておいたのだ。

「こ、これは……!?」

 それを見た瞬間、クラウスの顔色が変わった。

「馬鹿な……こんな大きさのものは見たことがないぞ……!」

「えっ、そんなに大きいのか?」

「ああ、そうだ。あのブラックワイバーンは強力な個体だとは思っていたが、まさかこれほどのものだったとは……」

 彼は驚きを隠せていない様子だ。
 確かに、あのブラックワイバーンは雷魔法も操っていたしなあ。
 強めの個体だったのは間違いないだろう。

「これで俺たちがブラックワイバーンを討伐したことを分かってもらえるかな」

 俺は彼に尋ねる。

「………………」

 クラウスは黙り込んでしまった。

「どうしたんだ?」

 様子がおかしいので声を掛ける。

「いや、すまない。君たちには驚かされてばかりだよ。コウタ殿は初出場で大会に優勝し、その他のメンバーも上位に食い込んだ。それだけでなく、少人数でこれほど上位の翼竜を討伐するとは」

「まあな。俺たちは強いぜ!」

 俺は得意げになって答えた。

「ふっ……。そうか。約束しよう。この度のブラックワイバーン討伐に対する報奨金として白金貨10枚を渡すことを。そして可能なら、また何らかの危機が来たら、その時もよろしく頼む」

 クラウスが頭を下げる。
 白金貨10枚か。
 かなりの大金だな。
 『悠久の風』のメンバーで分けることになるだろうが、一人あたりの配分で考えてもまだ大金だ。

「ああ。任せろ」

 俺はそう返事をする。
 子爵家であるクラウスと仲良くしておけば、いろいろと捗ることもあるだろう。
 友好的な関係を保ちたいものだ。
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