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第3章 武の名地テツザンへ

145話 一回戦

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 武闘大会が開幕した。
 いきなり俺の出番だ。
 俺はステージの中央付近に向かう。
 対戦相手も同様だ。

「「おおおおぉぉ!!!」」

 観客たちからそんな歓声が聞こえる。
 第一試合だし、相当に注目されているようだ。
 相手は前回の準優勝者らしいしな。

「両者向かい合って構えてぇ~。レディィイ、ファイッ!!」

 司会のデボラの掛け声とともにゴングが鳴る。

「先手必勝だ! せいっ!」

 俺は相手に駆け寄り、拳を突き出す。
 だが、あっさりかわされた。

「甘いですね」

 そう言って相手が攻撃を仕掛けてくる。

「くそ……」

 俺は相手の攻撃を必死にガードする。
 がんばって反撃するが、ことごとく躱されてしまう。

「なかなか悪くない動きですね……。初出場でこれは有望です」

 そう言いながら攻撃を続けてくる。

「ぐっ、まだまだっ!」

 俺はなんとか耐えているものの、防戦一方だ。
 このままでは負ける。
 どうすればいいんだっ!
 その時だった。

「がんばれ、コウタっち!」

 リンの声援が聞こえてきた。

「まだ終わっていないのです!」

 ミナも続けて言ってくる。
 そうだ。
 諦めたらそこで終わりだ。

 俺はリンたちとの鍛錬を思い返す。
 そして、ある作戦を思いつく。
 俺は相手に隙ができる瞬間を待った。

「これで終わりです!!」

 相手が大きめに振りかぶった攻撃を繰り出す。
 ここだ!

「はあっ!」

 俺は相手の一撃をかわし、カウンターを仕掛ける。

「なにっ!?」

 相手は慌てて防御する。
 カウンターの一撃は防がれてしまったが、体勢を崩すことには成功した。
 一気に畳み掛けるぞ!

「『気功解放』!」

 身体強化を使い、全力で相手を殴る。
 ドカッ!!!
 鈍い音がした。
 やったか!?

「ふぅ、危ないところでしたが、直撃は免れましたよ。まさか隠し球があったとは驚きです」

 相手はまだ元気だ。
 多少のダメージは与えられているが、戦闘不能というほどではない。

「私の勝ちのようですね。悪く思わないでください」

 彼はそう言い、とどめを刺そうとしてくる。
 力及ばなかったか。
 ……いや。

「ご主人様、がんばってください!」

 シルヴィの声が聞こえた。

「コウター! ファイトだよーっ!」

 ユヅキも叫んでいる。
 彼女たちの応援を無視するわけにはいかない。
 俺は最後の力で、渾身の突きを放つ。

「無駄ですよ!」

 相手は避けようとするが……。

「うおおおおぉっ!!!」

 俺は限界を超えて気功を解放する。
 そして俺の拳は、鈍い音と共に見事にヒットした。

「ぐほっ!!」

 相手が倒れる。
 審判がカウントをとるが、起き上がってこない。

「勝者、コウタ選手!!」

 司会のデボラがそう宣言する。

「「うおおおぉぉ!!」」

 観客たちが歓声を上げる。
 よし!
 俺の勝ちだ!

「やるじゃねえか!」

「すごいよ!」

「次も頑張れよ!」

 観客席からそんな声がかけられた。

「おう! 次も期待しておけよ!」

 俺は精一杯の笑顔でそう答えた。
 応援してくれたシルヴィたちにも、しっかりとお礼を言っておかないとな。
 そして、二回戦以降もがんばっていこう。
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