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第3章 武の名地テツザンへ

135話 武闘大会の観戦

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 その後俺たちは、宿屋に戻り身支度を整えた。
 そして、アーノルド、レオン、ユーヤたちと合流する。

「よう。昨日はよく眠れ……なかったみてえだな」

「枕が変わったら寝付けないタイプか。ギャハハハハ!」

 アーノルドとレオンがそう言う。

「まあそんな感じだ」

 俺はとりあえずそう言っておく。

「コウタの兄貴! どこでも寝られるのは、冒険者として重要な技術ですぜ! 俺はぐっすりさせてもらいやした!」

 ユーヤがそう言う。
 彼がぐっすり寝ている間に、彼の妹であるユヅキは俺とともに大人の階段を上ったわけだ。
 少し気まずい……。

「さて、今日は格闘術の鍛錬を行う……前に、やっておきたいことがある」

 アーノルドがそう言う。
 彼のジョブは『格闘家』である。
 それに、ここテツザンで鍛錬した経験もあるそうだ。
 必然的に、彼がこの町での予定を取り仕切ることになる。

「やっておきたいこと?」

 俺は首を傾げる。

「ああ。みんな、俺についてこい」

 アーノルドの先導に従い、俺たちは町を進んでいく。
 町の中央付近に向かっているようだ。

「ここだ」

「ここは……」

 闘技場だ。
 いわゆるコロシアムのような形状の建物である。

「ここで、何かあるのか?」

「ああ。今日は、月に一回の腕試し大会がある。テツザンの大会の中ではレベルが低い方だが、それでもそこそこはやる連中が揃っている。参考になるはずだぜ」

 なるほど。
 腕自慢が集まって、自分の強さを確かめ合うわけだ。
 この町は武の名地だそうだし、平均レベルは高いだろう。
 観戦するだけでも学ぶことは多いと思われる。

「よし。じゃあ入るぞ。入場料は無料だから気にすんなよ」

 俺たちは闘技場の客席に入る。
 席は七割ほど埋まっている。
 それなりに人気のある催し物のようだ。

「うおおー!!」

 歓声が上がる。
 リング上には、二人の男が向かい合っていた。
 ちょうど試合が始まるところのようだ。
 一人は細身の男。
 もう一人は大柄の男だ。

 互いに素手で構えている。
 体格の差はかなりのもの。
 大柄の方がかなり有利に見えるが、果たしてどうなるのか。

「はじめ!!!」

 審判らしき人が声を上げる。
 選手二人は同時に駆け出し、間合いを詰める。
 それぞれずいぶんと好戦的だな。

 先手を打ったのは大男のほうだった。
 巨体を活かした渾身の力で殴りかかる。
 対する細身は、それを軽くいなして懐に入り込み、腹部に拳を叩き込む。

「グハッ!?」

 勢いよく吹き飛ぶ大男。
 ステージ外で倒れ込むが、すぐに起き上がった。

「ちっ! まだまだぁ!」

 そのまま再び走り出す。
 再度、お互いの身体がぶつかり合った。
 それからしばらくの間、両者は互角の戦いを繰り広げていく。
 両者ともに一歩も引かない。

 やがて、戦いの趨勢が見えてきた。
 先に息切れを起こしたのは、大柄の方だ。
 対して、細身は余裕すら感じられる表情をしている。

「そろそろ終わりにしよう」

 細身の男は、大きく振りかぶって、全力を込めて相手の頭部に回し蹴りを放つ。

「ウグッ……」

 ドサリと音を立てて倒れこむ大男。
 勝負ありだな。

「勝者、赤コーナー!」

 司会の声が響く。
 観客が沸く。

「いい試合だったね。でも、あの人、本当に強いんだろうけど……。なんというか、全然本気を出してなかったように見えちゃった」

 ユヅキがそうつぶやく。
 俺も同感だ。
 おそらく、手加減をしていたのだ。

「体格だけでは優劣がつかないということか」

 俺はそう言う。
 ユーヤがうなずき、口を開く。

「そういうことですか。俺もがんばれば、きっと……」

 何にせよ、参考になる試合だった。
 その後、俺たちは引き続き大会を見学した。
 この町の中ではややレベルが低い大会らしいが、それでもなかなかの強者ばかりだ。
 俺たち『悠久の風』の当面の目標は『格闘家』のジョブの取得だが、それを無事に達成したら、大会に出てみるのもいいかもしれないな。
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