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第3章 武の名地テツザンへ

133話 大地讃頌

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 山岳部で酒盛りを行った翌朝だ。
 昨晩はそのまま寝てしまったので、今は状況を把握しているところである。

「ところでさ。なんでコウタのあそこに土がついているんだろう?」

「その件か。ユヅキも知らないんだな。シルヴィは……」

 俺はシルヴィに視線を向ける。

「……わたしはナニモミテイナイデスヨ?」

 彼女がカタコトでそう言う。
 うーん。
 何か知っていそうなんだが、言ってくれそうにないな。
 そうこうしているうちに、ミナとリンが起き上がった。

「おはようなのです。みなさん」

「さわやかな朝だぜっ!」

「おはよう。ミナ、リン」

 俺たちはそれぞれあいさつを交わす。

「二人は、昨日のことを何か覚えているか?」

「え? もちろん覚えているのです」

 ミナが平然とそう答える。
 彼女はドワーフだし、酒に強い。
 俺ように記憶をなくしたりはしないようだ。
 彼女が言葉を続ける。

「コウタくんがまずはシルヴィさんと致した後、ユヅキさんと始めたのです」

「そうだったな。俺もそこまでは覚えている」

 俺はため息をつく。
 と、そこでシルヴィが間に入ってきて口を開く。

「その後、ミナさんとリンさんが混ざってきて、みんなで深夜までやってましたっ!」

「そ、そうだっけ?」

 シルヴィの言葉に、俺は疑問の声を上げる。
 記憶にない。

「それは違うぜ。コウタっちとユヅキっちとの戦いが終わって、あたいとミナっちで次はどっちの番か口論していたんだよ」

「コウタくんをしばらく放置していたボクたちも悪いのですが……。気付いたら、コウタくんは地面に突っ込んでいたのです」

 リンとミナがそう説明する。

「地面?」

「そこに、ちゅうどいい穴があるのです」

「コウタっちが一人で腰を前後させている光景はシュールだったぜ。あたいも、思わず後退りしちまった」

 ……なるほど。
 それが真相か。
 シルヴィやユヅキとの戦いを終え、さあ三戦目というタイミングでお預けをくらい、俺は暴走してしまったのだ。
 まさか、大地を相手に発情するとは。
 自分で自分が怖いぜ。

「そうか。それは惜しいことをした。ミナやリンという素敵な女性を前にして、無駄打ちしてしまうとは……」

 昨日はこの町に来たばかりで高揚感があり、しかも酒の力もあった。
 ミナやリンと一線を越えるベストなタイミングだった。
 これを逃したのは痛い。
 また次回、機を伺う必要がある。

「コウタくん、それなら今からやりますか?」

「え? いいのか?」

 まさかシラフでも許しが出るとは。
 嬉しい誤算だ。
 しかし……

「うーん。今は朝だしなあ」

「ボクはいつでもオッケーなのですよ?」

「あたいも大丈夫だぜっ!」

 ミナとリンがそう言う。
 朝から元気なことだ。
 ユヅキは二日酔いでダウン気味なのに。

「よし! じゃあ早速……」

 俺は立ち上がりかけ……

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

 シルヴィが大声を上げて制止する。
 いったいどうしたというのだろう?
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