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第3章 武の名地テツザンへ

127話 大地の上での飲み直し

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 俺、シルヴィ、ユヅキ、ミナ、リン。
 みんなで町を歩いていく。
 この町は外壁によって囲まれており、高い安全性を誇る。
 しかしその中でも、比較的人口の少ない山岳部は存在する。
 俺たちが向かっているのはその方面だ。

「自然が多いですね」

「ああ。空気が美味いな」

 シルヴィの言葉を受け、俺はそう言う。

「澄んでいて気持ちいい」

「もっと上を目指そうぜ」

 ユヅキとリンが先導し、どんどん町の中心から離れていく。
 このあたりまで来ると外壁にも近く、人はまったく見かけない。

「ふむ。ここは絶景ポイントではないか?」

「本当なのです。月がよく映えるのです」

「きれいですね!」

 ミナとシルヴィが感嘆の声を上げる。
 月がきれいだし、月明かりに照らされた山も荒々しくて雄大だ。

「よしっ! コウタっち、酒を出してくれよ! ここで飲み直そうぜ!」

「結局はそうなるのか。いいけど、あまり飲み過ぎるなよ。明日に差し支えるぞ?」

「大丈夫だって。コウタっちは心配性だな!」

 はははっと笑うリン。
 まあいいか。
 俺としても、もう少しだけ飲んでおきたかったところだ。

「じゃあ、酒を出すぞ」

 ストレージを開き、収納しているエールを取り出す。

「うひょー! 自然の中で飲むとなると、一層うまそうに見えるぜ!」

「まだまだたくさん飲むのです!」

 リンとミナが目を輝かせている。
 この二人は、酒に強いな。
 ミナが特に強い。
 ドワーフの種族特性も関係しているだろう。

「僕も少し飲もうっと」

「わたしも飲みます!」

 ユヅキとシルヴィはさほど強くないが……。
 歩いている内に少し抜けたのだろう。
 また飲むつもりのようだ。
 みんな好きだねえ。

 それからしばらく、みんなで飲み明かした。
 ベロンベロンになっていく。
 外壁の中なので魔物の危険性はないのは安心だが。

「ご主人様ぁ。大好きですぅ」

「おいシルヴィ。かなり酔ってるな? 離れろって」

「嫌なのですよぉ。わたしはずっと、ご主人様に抱かれていたいです」

 すり寄ってくるシルヴィを引き剥がそうとするが、なかなか離れてくれない。
 彼女の柔らかい肌が俺に密着する。
 夜風で若干冷えた体に、彼女の体温が心地いい。

「ちょっと……だめだよ。こんな外で……」

 ユヅキが顔を赤くして、チラリとこちらを見る。
 その視線の意味するところを察した俺は、慌てて言った。

「違うんだって。別に変なことをするつもりじゃない」

「そうなんですかぁ? わたしはやる気満々なのですぅ」

「こら、だから抱きつくなって」

 そんな俺たちを見て、ニヤリと笑ったのはリンだった。

「なんだユヅキ。お前、本当は期待してるんじゃねーのか?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」

「本当かよ? なら……証拠を見せやがれ!」

「きゃあっ!?」

 リンは、いきなりユヅキを押し倒した。
 いったい何が始まるんだ?
 俺はシルヴィの肌の温もりを感じつつ、リンとユヅキのやり取りを見守ることにした。
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