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第3章 武の名地テツザンへ

90話 魔石の買い取り

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 『悠久の風』の5人で冒険者ギルドにやって来た。

「よう。セリアちゃん。久しぶりだな」

「あら、コウタさん。お久しぶりですにゃ」

 受付嬢のセリアがそう答える。
 海猫族で、青髪の女性である。

 俺たち『悠久の風』の資金繰りは好調である。
 それなりに余裕はあるので、毎日のように魔石を換金する必要はなくなった。
 今日は、久々に冒険者ギルドに顔を出したことになる。

「今日はどうされましたかにゃ?」

「ああ。そろそろ、魔石を売っておこうかと思ってな」

 俺はストレージからあらかじめ出しておいた魔石をカウンターの上に置く。

「にゃ? ……結構濃い魔石にゃ。ダンジョンで拾ったのにゃ?」

「ああ。そんなところだ」

 実際には、普通に魔物を狩って魔力を蓄積させたものだが。
 俺の『魔石蓄積ブースト』により、魔石に魔力がたまるペースが早い。
 セリアの目から見て、明らかに不自然なペースだ。
 前回ここで魔石を売却してから、さほどの時間は経過していないからな。

 『魔石蓄積ブースト』というチートスキルを考慮外とするならば、ハイペースで濃い魔石を売りにくる手段は2つほどに限られる。
 1つは、とんでもない戦闘能力で次々に魔物を狩っていくこと。
 もう1つは、ダンジョンなどでたまたま拾うことだ。

 俺たちは『パーティメンバー経験値ブースト』により、とんでもないスピードで成長している。
 冒険者ギルドの受付嬢であるセリアも、俺たちの急成長にある程度は気づいているはずだ。
 しかし、さすがに短期間で濃い魔石を得られるほどの実力には達していない。

「さっそく、魔石の魔力を計測しますにゃ。……むむ! やはり、相当に濃い魔石ですにゃ」

 セリアがそう唸る。
 査定が終わり、彼女が買取金を差し出してくる。

「今回はこの金額で買い取らせていただきますにゃ」

「おお。かなり多いな。ありがとう」

 俺は金貨100枚以上を受け取る。
 この金は、基本的に5等分することになる。
 ただし、俺、シルヴィ、ユヅキだけで狩った分も含まれているので、この3人の取り分はやや割り増して計算する。

 また、シルヴィは俺の奴隷なので彼女の取り分は俺がまとめて管理することになる。
 もちろん、不当に搾取するつもりはない。
 まだ残っているシルヴィの購入代金の分割払いに充てるのだ。
 この町で商会を営んでいるルモンドにしっかりと支払わなければならない。

 払い終えられれば、俺はシルヴィに肉体的に手を出せるようになる。
 今から楽しみだぜ。

 シルヴィも、おそらくは俺のことをそこそこ好いてくれているはずだ。
 奴隷なのでその気があるように見せかけているだけである可能性がなくもないが、実際のところその可能性は低い。
 別に、俺が自惚れているわけではない。

 チートスキル『パーティメンバー設定』の副次的な恩恵があるのだ。
 『パーティメンバー設定』では、画面上で名前が黒字で表示されている人物のみパーティメンバーに設定できる。
 名前が黒くなる条件はまだ検証中ではあるが、おおよそ親密度と相関していると見ている。
 『パーティメンバー設定』の対象者となっているシルヴィから俺に対する好感度は、間違いなく一定以上はある。

「さあ、とりあえず分けておくぞ」

 俺は各自に金貨を渡していく。

「ありがとう。僕、こんなにもらっていいのかな……」

 ユヅキがそうつぶやく。
 狩りへの参加時間で考えれば、適切な額を配分したつもりだ。

 彼女が気にしているのは、俺のチートスキルの件ではなかろうか。
 みんなの稼ぎが多いのは、俺のチートスキルによる急成長の影響が大きい。
 ユヅキ自身のがんばりもあるとはいえ、普通であればここまでの稼ぎを得ることはできない。

「いいさ。今後の報酬の配分については、また話そう」

 ここは冒険者ギルドの受付前だ。
 目の前に受付嬢のセリアがいるし、少し離れたところには他の冒険者もいる。
 俺のチートスキルが関わる打ち合わせをするわけにはいかない。
 ”念話”を使えば内密の話は可能だが、そこまでするほどでもないだろう。
 そんな俺たちの様子を見つつ、セリアが口を開く。

「コウタさんたちには、さらにいいお知らせがありますにゃ」

 いい知らせか。
 今回は、予想以上に高額の報酬を得ることができた。
 それ以外のいい知らせというと……。
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