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第2章 ダンジョンへ挑戦 ミナ、リン

76話 リトルブラックタイガー狩り

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 初日のリトルブラックタイガー狩りは、なかなかのものとなった。
 俺の『魔石蓄積ブースト』により、一定以上の稼ぎは確保されている。
 それに加えて、リトルブラックタイガーの肉も2度ドロップした。
 ドロップ回数は数日前の初挑戦時と同様だが、あのときは少し運が良かったと考えるべきだろう。

 今の俺たちは、リンが持つ『肉類ドロップ率上昇』のパッシブスキルの恩恵を受けている。
 今後も、安定したドロップに期待できる。

 俺たち『悠久の風』は、今日もリトルブラックタイガー狩りを行っているところだ。

「揺蕩う風の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。風の刃を生み出し、我が眼前の敵を切り裂け。ウインドカッター!」

 ザシュッ!
 俺の風の刃により、リトルブラックタイガーに切り傷が入る。

「凍てつく氷の精霊よ。契約によりて我が指示に従え。氷の槍を撃ち出し、我が眼前の敵を貫け。アイシクルスピア!」

 ズガン!
 シルヴィの氷の槍が、リトルブラックタイガーを貫く。

「次は僕……。いや、もう終わりか」

 ユヅキが追撃の呪文を放とうとしたところで、リトルブラックタイガーは虚空に消えた。
 これにて討伐完了だ。

「これで3体目なのです。順調なのはいいことですが、ボクは出番がないのです」

 ミナがそう言う。
 彼女は豪腕による一撃必殺の仕事人だ。
 ボス戦でのトドメの一撃は頼りになるが、こういうザコ戦ではやや出番が少ない。

「おっ! あれを見ろよ」

 リンがリトルブラックタイガーが消えたあたりを指差す。
 小ぶりな魔石が落ちている。
 そして、肉もドロップしていたようだ。
 リンが肉を拾い上げる。

「へへっ。順調だな。オリハルコンと比べりゃ、肉類は結構ドロップするのか?」

「ああ。オリハルコンは希少金属だ。階層ボスのゴーレムからは稀にしかドロップしない。それに対して、リトルブラックタイガーの肉は激レアというほどではないな。もちろん、ありふれた食材というわけでもないが」

 ここ最近のエルカの町では、リトルブラックタイガーの肉も品薄状態だ。
 最下級の魔物であるホーンラビットの肉ほどには一般に流通していない。

「いい感じだね。リンさんの料理コンテストの件が終われば、2階層のボスに挑戦するのもありかも?」

「悪くないな。しかし、ダンジョンだけに拘らず、魔獣の討伐依頼や隊商の護衛依頼あたりも経験しておきたいところだが」

 ダンジョンは、本来であればリスクの割にややリターンが低い狩場である。
 魔物の討伐時に残されるのは、基本的に魔石だけだからだ。
 
 一方で、魔獣であれば討伐後も死体が残る。
 肉や皮を残らず売却することができる。
 単純な稼ぎであれば、そちらのほうが旨味が大きい。

 隊商の護衛依頼も悪くない。
 実績を積み、冒険者ランクを上げることに繋がる。
 また、仕事を通して別の町に行くことは、いろいろな経験に繋がるはずだ。

 エルカの町は、やや大規模で平穏な町である。
 MSCにおいては、エルカのようなスタンダードな町の他にも、特色のある町が用意されていた。
 武の名地、剣の聖地、魔法学園都市、海洋都市、天空都市。
 食の都、和風の国、少数種族の隠れ里など……。
 この世界の町や人物は必ずしもMSCとは一致していないとはいえ、そういった町があったとしてもおかしくはない。

「わたしは、ご主人様の行くところへならどこへでも付いていきます!」

「ボクは、場所によっては付いていくのです。地域によっては独自の鍛冶技術を持っているらしいので……」

 ミナがそう言う。
 ジョブのレベル上げという意味でも、鍛冶の見聞を広めるという意味でも、彼女が俺たちに付いてくる意味は小さくないだろう。

「へへっ。あたいも、ミナっちと似たような感じだな。各地の名物料理を食べてみるために、同行したいところもあるかもな」

「わかった。リンの料理コンテストが終われば、今後の方針をまた相談しようか」

 俺はそう締めくくる。
 そして、俺たちはさらなる獲物を探して歩き始めた。
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