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第2章 ダンジョンへ挑戦 ミナ、リン

72話 オリハルコン入手

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 ゴーレムを討伐した。
 周回を始めた頃と比べると、ずいぶんと討伐ペースが早い。
 『パーティメンバー経験値ブースト』により、ジョブレベルがガンガン上がっている影響だ。
 また、単純に20戦近く繰り返すことにより、動きが最適化されつつあることも大きい。

「よし。今回の魔石も、なかなか良質なものだな」

 俺はゴーレムが残した魔石を拾い、そう言う。
 魔物を討伐した際には、確定して魔石がドロップする。
 しかし、その質や大小にはバラつきがある。

 階層ボスのゴーレムが残す魔石は、ゴブリンやホーンラビットの魔石よりも良質で大きな傾向がある。
 俺の『魔石蓄積ブースト』の恩恵により、その質や大きさがさらに向上しているわけだ。

「助かるね。僕も結構貯金ができているし……」

 ユヅキがそう言う。
 この数日でかなりの回数を周回しているので、魔石による収入も大きくなってきている。

 俺とシルヴィは、シルヴィの購入代金の分割払いがあるのでまだまだ余裕というほどではない。
 また、ミナとリンはそれぞれ本業の鍛冶と料理を休業している分のマイナスがあるので、純粋な臨時収入というわけではない。

 しかし、ユヅキにとっては思わぬ臨時収入と言ってもいいだろう。
 普通のパーティではここまで周回できないし、周回できたとしても魔石はこれほど効率よく集められない。
 『悠久の風』に属している間はこの恩恵を受けられる。
 彼女には、ぜひとも末長くこのパーティにいてほしいところだ。

「むっ! ご主人様、ミナさん。これを……」

 シルヴィが地面を指差す。
 彼女の指の先にはーー。

「オリハルコンなのです! とうとうドロップしたのです!」

 ミナが笑顔でそう言う。
 やっとか。
 結構かかったな。

 いや、そうでもないか。
 約20戦で初めてドロップした。
 ドロップ率としては、5パーセント程度になる。
 本来はもっと低いが、ミナの『鉱石類ドロップ率上昇』の恩恵を考えれば、妥当なところだろう。
 特に運がいいわけでも、運が悪いわけでもない。

「いいオリハルコンだな。前回にドロップしたのと同じくらいのサイズか」

 正確に言えば、前回はドロップしたのではなくてミッション報酬で得たオリハルコン(中)をミナに提供した。
 それと同程度のサイズ感だ。

「へへっ。ということは、いよいよあたいのリトルブラックタイガーの肉を集め始めるわけだな」

「はい。ボクはこれだけあれば十分なのです! さっそく明日から鍛冶を進めていくのです。ひと段落したら、リンさんのを手伝うのです」

「ああ。それで構わねえぜ。あたいの料理コンテストのほうは、ミナっちよりも少し後だからな」

「よし。とりあえず今日は帰ろう。明日から数日は、5人での冒険者活動を休止することにしよう」

 順調だ。
 順調ではあるのだが、少しだけ思うところがないわけでもない。

 この世界とMSCは非常に似ている。
 しかし、差異はもちろんある。
 特に大きな差異は、時間感覚だろう。

 MSCにおいては、もっとゴーレムのHPは低かったように思うし、ジョブレベルの上昇ペースも早かったように思う。
 まあ、ニートでもない限りは一日あたり2~3時間ぐらいしかできない人が多いので、当然のバランス調整だろうが。

 この世界において、俺たち『悠久の風』は一日あたり5~10時間ぐらい活動している。
 もちろん戦闘だけではなく、移動時間も含めている。

 活動時間という点ではMSCの平均的なプレイヤーのそれよりも明確に多いのだが、ジョブレベルの上昇ペースはやや遅い。
 それに伴い、冒険者ランクの昇格も滞っている。
 MSCの感覚では、もうとっくにCランク以上になっていてもおかしくないのだが。

 あとは、装備の問題もあるか。
 俺やシルヴィは、ミナから割安で売ってもらった装備を付けている。
 値段の割には上質なのだが、今の俺たちにはやや心もとない性能になりつつある。
 そろそろ新しい装備を購入したい。

 しかし、シルヴィの購入代金の分割払いが残っている以上、あまり高い買い物もできない。
 少し頭が痛いところである。
 俺はそんなことを考えながら、みんなとともにエルカの町へ戻り始めた。
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